研究実績の概要 |
放線菌Streptomyces rochei 7434AN4株は、3つの線状プラスミドpSLA2-L, -M, -Sをもち、2つのポリケチド抗生物質ランカサイジン(LC)・ランカマイシン(LM)を生産する。本研究では、放線菌における二次代謝生合成、形態分化、シグナル分子制御の統合深化を目指し、平成30年度は以下の3課題を遂行した。 (1) 特異生合成マシナリーの機能解析【二次代謝生合成】 まず、アゾキシアルケン化合物KA57-Aの生合成マシナリーに注目した。KA57-A生合成遺伝子(azx)クラスター中のポリケチド生合成酵素(PKS)遺伝子について、遺伝子破壊株の代謝プロファイル変化を解析したところ、親株と変化が見られなかった。クラスター中のPKSはKA57-A生合成に関与していないことが強く示唆された。また、LC生合成におけるキノン要求性デヒドロゲナーゼOrf23の機能解析を行い、基質特異性を明らかにした。 (2) 多面発現制御による未同定二次代謝産物の抽出と生合成【シグナル分子制御】:シグナル分子結合部位Trpが保存されていた転写リプレッサーについて遺伝子変異を施したところ、親株に見られない化合物の蓄積が認められ、フェニルプロパノイドや芳香族アミノ酸誘導体であった。これらの蓄積原因に関して興味が持たれる。 (3) ゲノム比較による形態分化関連遺伝子の抽出と同定【形態分化】 染色体末端欠失株において、「2-39株以外に共通して見いだされる領域」に気中菌糸形成因子の存在が示唆されたため、該当する138 ORFs (SRO_6607-SRO_6744) (nt 7,275-7,431 kb of the 7434AN4 chromosome) に注目した。そのうちの1つwhiBの相補株についてコロニー生育及びSEM測定を行ったところ、コントロール株との顕著な差異は認められなかった。
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