研究課題/領域番号 |
16H04920
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
森田 達也 静岡大学, 農学部, 教授 (90332692)
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研究分担者 |
日野 真吾 静岡大学, 農学部, 准教授 (70547025)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ムチン |
研究実績の概要 |
本年度は, 動物および培養細胞実験により,「DF摂取時のムチン分泌促進機序の全容を解明」するとともに,DFの新たな栄養生理的意義として,「ムチン分泌量の増大を介し腸管バリア機能を高めることで,リーキーガット症候群や炎症性大腸疾患の予防に寄与する」ことを明らかにすることを目的として試験を行い,下記の結果を得た。 1. ペクチンを酵素処理・分画後,低分子化ペクチンを得た。得られた画分は酵素処理前のペクチンと比べ30倍強いムチン分泌促進作用を持つことをヒト杯細胞株(HT-29MTX)で確認した。また,得られた画分は中性糖の比率がペクチンに比べ高く,ペクチン分子中のhairy regionを主成分とすると考えられた。 2. ラット結腸ムチン層の厚みを測定するための方法として,大腸をカルノア固定後,アルシアンブルー染色する方法を確立した。 3. 各種食物繊維を摂取した際の結腸杯細胞数,ムチン量およびムチン層の厚みを解析した。大腸で嵩を持つ食物繊維では糞便に排泄されるムチン量は増加し,一方で結腸組織のムチン層は薄くなる傾向があることを見出した。 4.腸管内容物中のムチン量の増加が大腸発酵に与える影響を解析するため,ラットにムチン添加飼料を摂取させた。その結果,摂取したムチンは腸内細菌によって効果的に短鎖脂肪酸へ代謝されることが明らかになった。つまり,腸管内容物中のムチン量の増加は下部腸管の主要エネルギー源である短鎖脂肪酸の供給に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した試験を実施し,in vitroでムチン分泌促進活性をもつペクチンを酵素処理・分画後,低分子化ペクチンを得ることができた。また,各種食物繊維を摂取した際の結腸杯細胞数,ムチン量およびムチン層の厚みを解析し,大腸で嵩を持つ食物繊維では糞便に排泄されるムチン量は増加し,一方で結腸組織のムチン層は薄くなる傾向があることを見出した。これについては,再現性も含め更に解析を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
1. 低分子化ペクチンムチン分泌促進作用をラット試験により確認する。 2. 各種食物繊維を摂取した際の杯細胞数,ムチン量,ムチン層の厚みとの関連を解析する。また,便秘時における応答についても合わせて解析を行う。 3. 腸管内容物中のムチン量の増加が腸内細菌叢に与える影響を解析する。
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