研究実績の概要 |
本年度は以下の3つの試験を行い以下の結果を得た。 ①昨年度までにin vitroでムチン分泌促進作用を確認したペクチン加水分解物のin vivoでの作用をラットで解析した。その結果,O-結合性糖鎖を指標としたムチン量は1.5%加水分解物飼料摂取ラットにおいて対照ラットの1.5倍に増加した。一方, ムチン量をELISA法により測定した場合増加量は1.3倍であり優位な差には至らなかった。②対照,サイリウム,小麦ふすまおよびフラクトオリゴ糖飼料を摂取させたラットにロペラミドを投与することで便秘を誘導したところ,対照,小麦ふすまおよびフラクトオリゴ糖飼料を摂取させたラットでは糞便量が有意に減少した。一方, サイリウム飼料摂取群では糞便量の減少が軽度であった。このときサイリウム飼料摂取群ではムチン排泄量が低下せず,分泌型ムチンであるMuc2の発現量は定常時と同レベルに保たれていた。また,結腸ムチン層の厚みはサイリウム摂取群で他の群に比べ薄い傾向を示した。サイリウム摂取により分泌されたムチンが潤滑剤として機能することで糞便排泄を促進したと考えられる。③食物繊維の摂取による腸管内容物中のムチン量の増加が腸内細菌に与える影響を解析するため,ラットに1.5%豚胃粘膜ムチン添加飼料を摂取させた。その結果,大腸へのムチン流入量の増加は酪酸産生菌であるAllobaculumやRoseburia属細菌を増加させることが明らかとなった。この菌叢の変化はムチン添加飼料摂取により,短鎖脂肪酸の中でも特に酪酸の増加率が大きいことと一致していた。
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