栄養・運動・睡眠は健康の要である。この3つの要素は生物時計という観点で見ると,統合的に制御できると考え,臓器間時計ネットワークの同調を介して代謝を正常化させて健康に結びつけるための分子的基盤を明らかにすることを目指した。 摂食リズムが不規則になるモデルとして,ダラダラ食いや,夜食症候群モデルを作成してきた。本研究では、特にヒトでも起きうる不規則な摂食タイミングとして朝食欠食を取り上げた。朝食欠食は,休息期から最初の食事が数時間だけ遅れるだけであるが,代謝異常が起きることが多くの観察研究で明らかになっている。すでに朝食欠食プロトコールを作成して,実験を行ってきた。高脂肪食を与えた朝食欠食モデルでは,肝臓時計と肝脂質代謝のリズムが数時間遅れ,体重増加をもたらすことが明らかとなった。一方,高コレステロール食では,肝臓時計はあまり変化せずに肝脂質代謝は顕著に遅れた。このとき体重増加は見られなかったが,肝臓重量が増加した。いずれの場合も活動期の体温上昇が遅れることは同じであり,摂食タイミングの数時間の遅れが,脳視床下部の体温中枢へは同じ影響を与えている。つまり,摂食タイミングは,肝臓だけでなく,脳の視交叉上核以外の視床下部でも同調因子として働いていることが分かった。肝臓では,同じ朝食欠食でも何を食べるかということと相互に関係することが明らかになった。さらに,高スクロース食を与えた場合の朝食欠食実験も行った。この場合体重増加が観察された。 メタボリックシンドロームの主要な原因として新たにクローズアップされてきたのが,スクロースの過剰摂取である。これは構成単糖であるフルクトースによる作用であるが,その作用機序は十分に明らかにされていなかった。スクロースの過剰摂食が脂肪肝や高中性脂肪血症を誘導するが,肝臓時計や小腸,盲腸時計に与える影響があることが分かった。
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