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2017 年度 実績報告書

脂肪のおいしさとストレスが引き起こす過食の分子生物学的機序の解明と制御

研究課題

研究課題/領域番号 16H04924
研究機関京都大学

研究代表者

松村 成暢  京都大学, 農学研究科, 助教 (70467413)

研究分担者 佐々木 勉  大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20534879)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード肥満 / 高脂肪食 / 褐色脂肪組織
研究実績の概要

マウスは油脂に対して非常に高い嗜好性を示す。油脂の高い嗜好性が肥満を誘導する主たる要因であるという仮定をもとに実験を行った。マウスの飼育ケージに餌と水に加えて給水ボトルにコーン油を入れたものを設置し、コーン油を好きなだけ摂取できる環境下で実験を行った。餌だけを摂取したマウスと比較してコーン油を摂取したマウスは1日の総摂取カロリーが大幅に増大した。しかしながら、体重増加はほぼ同等であった。
次に間接熱量測定法によりマウスのエネルギー代謝を測定したところ、餌だけを摂取したマウスと比較してコーン油を摂取したマウスはエネルギー消費量が増大していた。このとき、行動量に変化はみられなかったためコーン油摂取によるエネルギー消費の増大は熱産生によるものと推察された。そこでコーン油を摂取したマウスの体温を低温環境下で測定し検討を行った。餌のみを摂取したマウスの体温は低温環境下では徐々に低下する傾向がみられた。一方でコーン油を摂取したマウスは全く体温低下が観察されず、強い低温暴露耐性を示した。
マウスの体熱産生に大きく寄与している組織のひとつが肩甲骨間褐色脂肪組織である。コーン油摂取により熱産生能力の向上がみられたため褐色脂肪組織について検討を行った。コーン油を摂取したマウスの褐色脂肪組織では熱産生に関わるタンパク質であるUncoupling protein 1 (UCP1)発現の増加が見られた。また肩甲骨間褐色脂肪組織に接続する交感神経を切除するとコーン油摂取によるUCP1発現増加が消失することも明らかとなった。
以上の検討より、コーン油の摂取は交感神経を介して、肩甲骨間褐色脂肪組織の熱産生を向上させエネルギー消費を亢進することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

油脂の摂取は肥満を招くと考えられてきたが、本実験により例外もあり得るという新たな知見が得られた。さらにコーン油の摂取が肩甲骨間褐色脂肪組織の熱産生能力を大幅に向上させ、エネルギー消費をも向上させるということが明らかとなった。
また、一般的に摂食行動は消化吸収のために副交感神経を活性化するが油脂の摂取は交感神経を活性化するという新たな経路を見出し、当初の研究計画目標を概ね達成したため。

今後の研究の推進方策

油脂の摂取が交感神経を介して褐色脂肪組織の熱産生を向上し全身のエネルギー消費を亢進することが明らかとなった。褐色脂肪組織の交感神経活動を制御しているのは脳であり油脂の摂取が脳になんらかの影響を与えていると考えられる。そこで油脂の摂取が脳にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。
また、2016年度の研究では油脂の摂取とコルチコステロンの投与が顕著な肥満を誘導することを明らかにしている。油脂の摂取が褐色脂肪組織の機能に影響を与えるのであればコルチコステロンは褐色脂肪組織に影響を与えている可能性が高い。そこでコルチコステロン投与が褐色脂肪組織に与える影響を検討する。そして、コルチコステロンが脳内の摂食調節に関わる因子に与える影響を検討する。さらに、摂餌量や油脂の摂取量に与える影響を検討し、ストレスホルモンが油脂の嗜好性に与える影響を明らかにする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] Salk Institute(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Salk Institute
  • [学会発表] CRTC1欠損マウスは高脂肪食により重度の糖尿病になる2017

    • 著者名/発表者名
      松村成暢, MONTMINY Marc
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会

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公開日: 2019-12-27  

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