研究課題
PGC1αがBCAA-mTOR軸のタンパク質合成経路を媒介している可能性について、骨格筋特異的PGC1α欠損(PGC1α筋KO)マウスを用いて検証し、このマウスの筋肉におけるミトコンドリア機能の減少が示唆された。また、PGC1α筋KOマウスは持久運動能力が低かった。BCAAによるmTOR活性化をPGC1αが媒介している事が示唆された。さらに、PGC1αKOマウス骨格筋について、マイクロアレイおよび次世代シーケンサーの網羅的発現解析を行った。KOは過剰発現(トランスジェニック、Tg)と逆向きの表現型を示しており、gain of function だけでなく、loss of functionの実験によって、PGC1αの機能が明らかになった。すなわち、PGC1αを活性化することが筋機能の活性化に繋がることが、in vivoの実験で示唆された。また、PGC1αがアラニン代謝を制御している可能性についてもデータが得られた。絶食や除神経、ストレプトゾトシン(糖尿病誘導剤)処理などの筋萎縮モデルの骨格筋においてFOXO1の遺伝子発現量が増加することを観察した。筋萎縮時のFOXOの役割を調べるために、FOXO1、FOXO3、FOXO4遺伝子を欠損させる骨格筋特異的FOXO-KOマウス(FOXO筋KOマウス)を作製した。このFOXO-筋KOマウスにおいて、骨格筋特異的にFOXO1、FOXO3、FOXO4の発現が低下していることを確認した。今後、筋萎縮が抑制されるかどうか調べる予定である。FOXO1の転写活性化能をin vitroで解析するためにGAL4 DNA結合領域とFOXO1との融合タンパク質を細胞内で発現させ、ルシフェラーゼのレポーター活性で検出する系を確立し、FOXO1の活性を抑制する物質のスクリーニングを開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究は「研究の目的」に沿って、順調に進捗している。研究成果を、本年度、英文専門誌に発表した(Deletion of the transcriptional coactivator PGC1α in skeletal muscles is associated with reduced expression of genes related to oxidative muscle function.Biochem Biophys Res Commun. 2016; 481: 251-258.等)。さらに、国内外の学会や研究会おいて研究成果を発表した。
本研究では、FOXO1とPGC1αのふたつの因子に特に着目して研究を行っている。FOXO1は骨格筋の萎縮を引き起こし、PGC1αの運動時の代謝変化を引き起こすことが明らかとなってきた。筋萎縮は身体活動を低下させQOLが低下する。がんによる筋萎縮(カヘキシー)の防止は寿命を延長させることが報告される。また、加齢による筋萎縮時の肝臓の病変(肝硬変など)は、アンモニア脳症を引き起こすなど、骨格筋量の重要性が知られる。一方、適度な運動は生活習慣病の予防・改善に効果があることが知られる。しかしながら、運動習慣のない人、生活習慣病の合併症などで、運動ができない人なども多く存在する。そのような人に対して、運動効果を引き起こす食品や医薬品(運動模倣薬)は期待が大きい。これらの経路の主要な制御因子としてFOXO1やPGC1αが発見されたことは重要である。FOXO1やPGC1αの活性を改変しうる成分を見出し、検証を行ってゆきたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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