研究課題
本研究では、骨格筋機能の遺伝子発現調節に重要であるPGC1およびFOXO1に着目して研究を進めた。FOXO1の転写活性化能をin vitroで解析するためにGAL4 DNA結合領域とFOXO1との融合タンパク質を細胞内で発現させ、ルシフェラーゼのレポーター活性で検出する系を確立した。この系を用いて520種類の食品由来成分でスクリーニングを行ったところ、ビタミンDがFOXO1の転写活性を顕著に抑制することが判明した。ビタミンDはサルコペニアのような筋萎縮の予防に効果的であることが知られている。本研究では、活性型ビタミンDがFOXO1の活性を抑制し、Atrogin 1(ユビキチンリガーゼ)やCathepsin L(リソソームタンパク質分解酵素)などの筋萎縮関連遺伝子の発現を抑制することを見出し、ビタミンDによる筋萎縮抑制のメカニズムの手掛かりを得た。さらに、同様のアッセイ系でPGC1αのホモログであるPGC1βが大豆イソフラボンのダイゼインおよびゲニステイン、レスベラトロールにより転写活性化されることが判明した。この実験により、食品成分による筋機能制御の分子機序の一端が明らかとなり、機能性食品開発の手がかりが得られた。研究の過程でDNAメチル化酵素であるDnmt3aの発現が、様々な骨格筋萎縮モデルで顕著に発現減少することを見出した。DNAメチル化酵素であるDnmt3aの発現維持が、筋萎縮予防に関与し得る可能性を検討するために、骨格筋特異的Dnmt3a欠損マウス(Dnmt3a KOマウス)を作出した。Dnmt3a-KOの筋サテライト細胞は分化能が低下し、筋再生が抑制することが明らかとなった。これらの結果から、筋萎縮時の筋再生能低下にはDNAメチル化酵素の発現低下によるエピジェネティクス制御が示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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