研究課題/領域番号 |
16H04930
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐野 雄三 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90226043)
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研究分担者 |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 壁孔 / 広葉樹 / 道管 / キャビテーション |
研究実績の概要 |
平成28年度、微細構造解析に関しては、成育する植物に強い乾燥ストレスを引き起こす特異な環境下(小笠原諸島父島の低性灌木帯)に成育する低木類7科8属9種を対象として、走査電子顕微鏡による道管相互間の壁孔壁の微細構造解析を行った。いずれの樹種も乾燥ストレスに起因する通水障害に対する耐性が高いと考えられる密な構造を備えていることを明らかにした。また、本課題の目的の一つとしている樹木組織のミクロな構造解析のための方法論の確立に関しては、臨界点乾燥法が通水組織の壁孔壁のようなデリケートな構造物の微細構造をありのままに近い状態で解析するために適した方法であること、および本課題の経費で購入した臨界点乾燥機がこの方法による走査電子顕微鏡試料の作製を着実且つ効率的に行うために極めて有効なツールであることを確認できた。透水性および通水障害に対する耐性の測定に関しては、single vessel method(単一道管灌流法)と呼ばれる特殊な技法を適用することを計画し、器具類を揃えてカスタムメイドで測定装置を組み上げて試行した。計画段階での想定通り、実験は困難をともない、とくにマイクロキャピラリーを道管に挿入して漏水防止の目止めをするなどの試料調製段階の工程を再現性よく成功させることが難しく、満足なデータを得られるには到らなかった。その対策を立てるための準備として、年度末に本方法による成果を発表している東京大学理学研究科植物生態学研究室を訪ねて教示を仰いだ。これら前年度の活動や成果を踏まえ、本年度は下記の内容を実施する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造解析に関しては、基幹となる研究手法の一つである走査電子顕微鏡による微細構造解析の方法論に関して進展があったこと、樹木水分生理学的ならびに樹木細胞壁の機能構造学的に意義のある知見も得られた。物理的な計測に関しては、十分な成果が得られたとは言えないが、計画段階での想定内の範囲で進めている。以上のことから、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
構造解析に関しては、透過電子顕微鏡的解析に着手し、走査電子強敵解析による知見との突き合わせを行い、細胞壁に内在するナノメートルオーダーの微細な空隙の構造をどれだけありのままに近い状態で解明できるかを検討する。透水性と通水障害耐性の計測に関しては、東大植物生態学研究室にて教示を受けたことを活かして問題点を克服することを目指す。
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