研究課題/領域番号 |
16H04930
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐野 雄三 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90226043)
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研究分担者 |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 壁孔 / 壁孔壁 / 抽出成分 / 通水 |
研究実績の概要 |
本課題は、広葉樹の道管相互間を隔てる壁孔壁という薄いフィルター状の構造物のインタクトな微細構造を詳細に解明し、道管相互壁孔における通水制御機構を検討することを目的としている。 平成30年度は一部の広葉樹において通水機能を維持していることが明らかな辺材外層部の道管相互壁孔に存在する抽出成分(以下、壁孔抽出成分と記す)に関して重点的に研究を進めた。この壁孔抽出成分は、カバノキ属やヤナギ属など一部の分類群の樹種にのみ存在することを10年余り前に申請者がはじめて発表したものであるが(Sano Y.: Am. J. Bot. 92: 1077-1084, 2005)、物質同定には至っておらず、どのような分類群に存在するのかについても調査は進んでいない。本年度、この壁孔抽出成分の同定、並びにその存否が属~科レベルで共通する形質なのかを明らかにすること目標とした。物質同定に関しては、有機溶媒の極性にかかわらず抽出されることは明らかにしていたので、抽出される物質数・量が少ないヘキサン抽出画分からの分離、化学分析を実施した。その結果、壁孔抽出成分の有力候補として、オレイン酸であることが示唆された。次年度は、脂肪酸を特異的に標識する蛍光プローブによる可視化、あるいはTOF-SIMSのような直接的なマッピング法を適用し、壁孔抽出成分がオレイン酸であることの証明を試みる。属~科レベルでの存否に関しては、カバノキ科を重点的に計15種について走査電子顕微鏡により調べた。その結果、カバノキ属では存在するが、ハンノキ属、クマシデ属、アサダ属では存在せず、この壁孔抽出成分の存否は科内で一定せず、属以下の分類単位の特徴であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広葉樹の道管相互間の通水性に甚大な影響を及ぼすと考えられる壁孔抽出物の化学的性質に関して、有力物質を絞り込むことができた。その存否が植物分類とどのように対応しているのかについても知見をえることができた。本課題で目標としていた項目について着実に進展させることができたことから、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
超音波振動を応用した超超薄切片法など、新手法を適用し、従来法以上のレベルで微細構造解析を進める。また、通水性と通水障害耐性の計測を軌道に乗せ、機能面の解析を進める。
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