研究課題/領域番号 |
16H04931
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清和 研二 東北大学, 農学研究科, 教授 (40261474)
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研究分担者 |
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アーバスキュラー菌根菌 / 外生菌根菌 / 距離依存性 / 種多様性 / 相対優占度 / 落葉広葉樹 / 温帯林 / 病原菌 |
研究実績の概要 |
病原菌と菌根菌の種特異性の解明 落葉広葉樹5種の野外播種試験 :落葉広葉樹5種(ブナ・ミズナラ・イタヤカエデ・ミズキ・ウワミズザクラ)それぞれの成木下に同じ5種の種子を播いた。 実生の死亡要因を調査を測定した。
1. 菌根菌タイプによってCDD (conspecific distance-dependency) の方向性・強さが異なることが明らかになった。すなわち、アーバスキュラー菌根菌(AM)タイプのミズキ・ウワミズザクラでは同種成木下での病気による死亡率が、他種下より高く、負のCDD が見られた。一方、外生菌根菌(ECM)タイプのブナ・ミズナラでは逆に同種成木下での病気による死亡率が、他種下より低く、正のCDD が見られた。これは外生菌根菌が同種成木下で毒性を強める病原菌に対して強い防御効果を持つためであると考えられた。 2. 試験に用いた5種の天然林での優占度とCDDの強さには有意な正の相関が見られた。これは、アーバスキュラー菌根菌(AM)タイプのミズキ・ウワミズザクラが負のCDD により成木が互いに離れた分布するようになったためである。さらに、外生菌根菌(ECM)タイプのブナ・ミズナラでは逆に正のCDD が見られ、同種近傍で同種実生が定着しやすく集団を作りやすいためであると考えられた。これらの結果は菌根菌タイプによるCNDDの強さと方向性の違いが個々の樹種の相対優占度を決定しているとした世界で初めての研究である。 3. 熱帯林より温帯林に多いECMタイプの正のCNDDが温帯林の種多様性の低さを示唆しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
i) 落葉広葉樹5種の野外播種試験での葉の病気の効果の遅延による観察の延長 落葉広葉樹5種(ブナ・ミズナラ・イタヤカエデ・ミズキ・ウワミズザクラ)それぞれの成木下に同じ5種の種子を播き、翌年発芽した実生の死亡要因を一年間調査した。しかし、その秋にすべての実生を抜き取り菌根菌の感染率と種推定を行うよていであったが、遅く発生した葉の病気による死亡率を厳密に推定するため抜き取りと延期した。死亡率の結果は想定どうりであったが、さらに厳密を期すため抜き取りは延長し、 個々の菌根菌に感染した実生の成長量の種間比較、それぞれの種特異性の推定は、今後、早急に行うこととする。また、病原菌・菌根菌の種特定は外部形態およびDNA解析で行うが、すでに準備はできている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 室内接試験による推定:上記の野外播種試験で見られた5種の成木それぞれの下で、最も感染率の高い病原菌・菌根菌を単離・培養する。それぞれの菌株を5種すべての当年生実生(無菌状態で養苗)に接種し、病原菌の毒性ならびに菌根菌による成長促進効果を調べ、種特異性を推定する。 2. 病原菌と菌根菌の効果が及ぶ範囲の推定:境界からの距離別の播種試験はすでに設定してありイタヤカエとコナラ2種を両林分に播種する。2種それぞれの実生の病原菌による死亡率、菌根菌の感染率や感染実生の成長量を調べ、親木(境界)から離れるに従ってどの程度、病原菌の毒性や菌根菌の成長促進効果が減少するのかを解析する。コナラは外生菌根菌とイタヤカエデはアーバスキュラー菌根菌と共生するので、菌根菌タイプの違いによる影響も検討する。 3. 光環境(ギャップ)の影響:光環境によって病原菌と菌根菌の相対的重要性が変化するかどうかを検証する。つまり、「暗い林内では種特異的な病原菌が卓越し、親木の近傍では同種実生が死亡し易くなる。一方、明るいギャップでは菌根菌により同種実生が定着し易い」といった仮説を検証する。 4. 相対優占度との関係:「群集内の相対優占度が高いほど菌根菌と共生し、親木近傍で同種実生の成長を促進し、逆に優占度が低い樹種では病原菌による同種実生の死亡が起こりやすい」という仮説を検証する。
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