研究課題
本研究は、落葉広葉樹林における種多様性の創出・維持メカニズムを、野外播種試験の解析によって明らかにした。これまで無機的な環境のヘテロ性が主な要因と考えられてきたが、本研究では一本の成木の近傍における病原菌・菌根菌との相互作用が強く働いていることを解明した。1.種多様性の増加を促す病原菌の種特異性を解明した。「親木近傍における種特異的な病原菌は同種実生の死亡を引き起こし、他種実生への置き替わりを促し、種多様性を増加させる」といったJanzen-Connell(J-C)仮説の温帯林で成立を促す、「葉の病気」の種特異性を明らかにした。特にウワミズザクラやミズキなどでは実生だけでなく稚幼樹まで枯死させ種多様性創出の大きな駆動要因となっていることを明らかにした。2.種多様性の増加・減少を調整する菌根菌の役割を解明した。アーバスキュラー菌根菌と共生する樹種では親個体近くでは種特異的な病原菌から実生を守ることができず同種の実生が死亡し、種多様性が促進される。一方、外生菌根菌と共生する樹種では親個体近くでは病原菌の感染から実生を守ることができるので同種の実生が増加し種多様性が抑制されることを、野外播種実験によって明らかにした。3.菌根菌タイプで空間分布パターンが異なることを天然林の大面積調査から明らかにした。外生菌根菌タイプではは親木との菌糸ネットワークによって結ばれた親木近傍の子個体に養分供給が促されそれらの成長が促進されるため、同種が集中して分布するようになり、結果的に相対優占度が増加した。一方、アーバスキュラー菌根菌タイプでは親子が離れて分布し相対優占度が減少することを明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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