研究課題/領域番号 |
16H04939
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
山崎 晃司 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (40568424)
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研究分担者 |
坪田 敏男 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10207441)
森光 由樹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (20453160)
小池 伸介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40514865)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ツキノワグマ / 生態 / 生理 / 体重 / 心拍 |
研究実績の概要 |
栃木県日光市,群馬県片品村,沼田市,みどり市などの一帯において,野生グマの栄養・生理状態の把握によりその行動生態の解明を試みた。並行して飼育クマを用いた同様の実験も行った。 野生グマの栄養状態の判定:日光・足尾地区に,約15基の捕獲ワナを設置して,ツキノワグマ計18頭の学術捕獲を行った。捕獲時に,体計測,生殖ホルモン分析のための採血,電気抵抗式体脂肪計を用いて体脂肪量の計測を行い,栄養状態の判定を行った。捕獲個体には,衛星通信方式活動量センサー付GPS首輪を,計18個体(オス8頭,メス10頭)に装着して行動および活動量の把握を行った。 野生グマの生理状態の把握:深部体温計および皮下心拍計の装着により生理状態の変化のモニタリングを試みた。今年度も多数のロガーを装着したが,クマ自身による取り出しが多く,回収については5例に留まっている。生理データロガーの計測値の検証と,給餌個体と野生個体の生理比較のために,秋田県阿仁クマ牧場において同システムの飼育個体実験も実施した。 野生グマの摂取食物品目とその摂取量の推定:GPS首輪に追加する形で,小型軽量ビデオカムを装着して当該個体の食性履歴と摂取量の推定を行った。しかし,録画タイミングを定間隔としたために,休憩中であるなど,クマ自身の体にレンズが遮蔽される例が多く,50%以上のビデオクリップで映像が得られない結果となった。 野生グマの栄養状態の確認:山中にバッテリー駆動のデジタル体重計を計6箇所設置して,体重の季節変化の非侵襲的な記録を試みた。この際,赤外線自動カメラも設置し,クマを体重計の上に立たせると共に,識別のための胸部斑紋を撮影した。複数個体が訪問して,1個体については複数回の経時的な体重計測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況 おおむね計画通りに進行しているが,以下の3点について当初予期しないことが起こっている。 1 皮下に挿入した心拍計が,クマ自身によって高頻度で取り出されている可能性が高かった。そのため,回収できたデータ量に関して不十分な状態になっている。 2 首輪装着型のカメラでは,日中のクマの休息行動が想像よりも高く,レンズがクマの体により遮蔽される割合が高くなっている。 3 非侵襲的な体重計測については,現れたツキノワグマの斑紋識別に不鮮明なことがあり,個体識別が低い状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に明らかになった課題について,以下のような対応を検討している。 1 皮下に挿入した心拍計が,クマ自身によって高頻度で取り出されている件に関しては,次年度以降は,挿入位置や縫合方法に工夫をする予定である。 2 首輪装着型のカメラで,レンズがクマの体により遮蔽される割合が高くなっている点については,今後,照度計を取り付けて,レンズ周辺が明るい時だけにビデオを作動させる方法を検討している。 3 非侵襲的な体重計測について,現れたツキノワグマの斑紋識別による識別立が低い状況への対応は,遺伝子試料(体毛)を採取する仕掛けを加え,遺伝子分析による個体識別も併用することを考えている。
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