研究課題/領域番号 |
16H04944
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研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
相川 拓也 国立研究開発法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (90343805)
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研究分担者 |
前原 紀敏 国立研究開発法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (20343808)
升屋 勇人 国立研究開発法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (70391183)
中村 克典 国立研究開発法人森林総合研究所, 東北支所, グループ長 (40343785)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビロウドカミキリ / ボルバキア / FISH解析 / 抗生物質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①分子生物学的手法を用いてビロウドカミキリの体内にボルバキアが感染していることを証明すること、そして②ボルバキアがビロウドカミキリに引き起こす生殖異常のタイプを明らかにすることの2点である。今年度は、ボルバキアの16S rRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを用いたFluorescent in situ hybridization (FISH)解析を行い、ビロウドカミキリ卵巣細胞内のボルバキアの検出を試みた。また、抗生物質を含ませた人工飼料をビロウドカミキリの幼虫に与えることで、ビロウドカミキリ体内に存在するボルバキアの除去を試みた。 FISHによる観察の結果、ビロウドカミキリの卵巣細胞内にはボルバキアの存在を示すシグナルが多数確認された。このことから、ビロウドカミキリの卵巣内にはボルバキアが実在していることが証明された。また、バクテリアユニバーサルプローブを用いたFISHも行ったところ、さらなるシグナルの増加は確認されず、ビロウドカミキリの卵巣にはボルバキア以外の細胞内共生細菌は存在していないことが示唆された。 次に、ビロウドカミキリの人工飼料に0.1%と0.5%の濃度のテトラサイクリンを含ませ、ビロウドカミキリの幼虫をその飼料上で成虫になるまで飼育した。その結果、0.1%区では成虫になった8頭のうちボルバキアを除去できたのは3頭のみであった。一方、0.5%区では得られた8頭の成虫のうち、ボルバキアの除去に成功したのは6頭であった。このように、ビロウドカミキリの幼虫に抗生物質入りの人工飼料を与えることで、体内のボルバキアを除去することは可能であったが、どちら区でも完全にボルバキアを取り除くことはできなかった。したがって、ボルバキアを体内から完全に除去したビロウドカミキリ系統を作るには、さらに高濃度の抗生物質を与える必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FISH解析により、ビロウドカミキリの体内にボルバキアが生息していることを証明することができた。また、抗生物質を含ませた人工飼料をビロウドカミキリの幼虫に与えることによって、ビロウドカミキリ体内のボルバキアを除去できることも確認できた。すべてのビロウドカミキリ個体からボルバキアを完全に除去するには、さらに高濃度の抗生物質を与える必要があるが、その方法が有効であることについては確認できたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、0.5%濃度のテトラサイクリンを用いて、ビロウドカミキリ体内のボルバキアの除去を試みたが、すべての供試虫からボルバキアを取り除くことはできなかった。したがって、今後はすべての個体から確実にボルバキアを除去できるよう、さらに高濃度の抗生物質を与える予定である。
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