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2017 年度 実績報告書

木質バイオマスの酵素糖化のボトルネックとなるキシランの構造と性状に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16H04949
研究機関東京大学

研究代表者

鮫島 正浩  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30162530)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード木質バイオマス / セルロース / ヘミセルロース / キシラン / リグニン / 酵素糖化
研究実績の概要

セルロース系バイオマスの酵素糖化においては、従来、セルラーゼによる結晶性セルロースの分解が遅いことが問題と考えられてきたが、最近の申請者らの研究では、シラカンバ材由来の木質バイオマスではキシランの一部が結晶性セルロースの中に取り込まれており、これが結晶性セルロースの酵素糖化の効率化にとってボトルネックとなっていることが示唆されている。本研究では、広葉樹材由来の木質バイオマス中に存在する難分解性キシランの構造的な特徴と結晶性セルロースとの複合化状態を明らかにし、その上で、このキシラン-セルロース複合体の効率的な分解に必要な酵素の特定を行い、これらの酵素の組み合わせの最適化により木質バイオマスの効率的な酵素糖化システムを構築することを研究の目的とする。
平成29年度では、市販酵素剤ならびに市販および自ら作製したモノコンポーネント酵素を組み合わせたヘミセルラーゼ剤およびヘミセルラーゼ+セルラーゼ剤を用いて、アンモニア処理を施したシラカンバ材由来の木質バイオマスをはじめ、合計6種類の広葉樹材由来のアンモニア処理木質バイオマス対して二段階の酵素糖化を行い、得られた生成単糖の収量ならびにその構成について分析を行った。
その結果に基づき、酵素糖化によるグルコースやキシロース等の単糖収率について評価を行うと、化学分析によるバイオマス構成成分としてのキシラン/リグニン比(X/L比)の高いシラカンバ、ヤナギ、ブナ等の樹種では効率的に酵素糖化が進行し、高い単糖収率が得られ、一方、X/L比の低いアカシア、ユーカリ、ポプラ等の樹種では酵素糖化は効率的に進行しないことが明らかとなった。また、両者においては、ヘミセルラーゼ剤だけで分解できる易酵素分解性キシランとヘミセルラーゼ+セルラーゼ剤でないと分解できない難酵素分解性キシランの量比と構造的特徴に大きな差異があることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アンモニア前処理を行った6種の広葉樹由来木質バイオマスに対して酵素糖化実験を実施し、得られたグルコース、キシロース、さらにグルクロン酸の単糖収率について評価を行った。その結果、化学分析によるバイオマス構成成分としてのキシラン/リグニン比(X/L比)の高いシラカンバ、ヤナギ、ブナ等の樹種では効率的に酵素糖化が進行し、高い単糖収率が得られ、一方、X/L比の低いアカシア、ユーカリ、ポプラ等の樹種では酵素糖化は効率的に進行しないことを明らかにした。また、両者においては、ヘミセルラーゼ剤だけで分解できる易酵素分解性キシランとヘミセルラーゼ+セルラーゼ剤でないと分解できない難酵素分解性キシランの量比に大きな差異があることを明らかにした。
さらに、酵素糖化において単糖収率が著しく高かったシラカンバ由来のアンモニア処理木質バイオマスでは、難酵素分解性キシランに対して易酵素分解性キシランでのグルクロン酸残基の置換度が著しく低い特徴を有することを明らかにした。これに対して、易酵素分解性キシラン量が低いアカシア、ユーカリ、ポプラ等では易酵素分解性キシランよりも難酵素分解性キシランでのグルクロン酸残基の置換度が低い逆の傾向が認められ、特にアカシアでは置換度が著しく低いことを明らかにした。これらの樹種では、酵素糖化によりセルロース由来のグルコース収量も低いことから、グルクロン酸残基による置換度が低いキシランがセルロースと複合体を形成した場合、酵素糖化の効率化が妨げられる可能性が示唆された。
以上のように、平成29年度では、当初に計画していた実験を実施し、十分な研究成果を上げることが出来た。

今後の研究の推進方策

平成29年度の研究成果により、キシラン構造の中でのグルクロン酸残基の置換度とその存在形態が広葉樹由来の木質バイオマス酵素糖化の効率化に大きな影響を及ぼすことが示された。一方、アンモニア処理バイオマスの場合、処理後もリグニンが固体としてバイオマス中にほぼ全量残るため、リグニンが酵素糖化の効率化に与える影響についても大きいと考えられた。このようなことから、リグニンの存在の影響を排除するため、脱リグニン処理を行ったバイオマスについて酵素糖化実験を行う必要性があると判断した。そこで、平成30年度においては、当初は計画に入れていなかった亜塩素酸ナトリウム処理(Wise処理)を施した木質バイオマス調製し、これに対して同様の酵素糖化実験を行うこととした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Application of ammonia pretreatment to enable enzymatic hydrolysis of hardwood biomass2018

    • 著者名/発表者名
      Kiyoshi Sakuragi, Kiyohiko Igarashi, Masahiro Samejima
    • 雑誌名

      Polymer Degradation and Stability

      巻: 148 ページ: 19-25

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.polymdegradstab.2017.12.008

    • 査読あり
  • [学会発表] Application of Ammonia Pretreatment towards Enzymatic Saccharification of Hardwood Biomass2018

    • 著者名/発表者名
      Kiyoshi Sakuragi, Kiyohiko Igarashi, Masahiro Samejima
    • 学会等名
      The 5th Asian Conference on Biomass Science
    • 国際学会
  • [学会発表] 担子菌Phanerochaete chrysosporiumが生産するα-L-アラビノフラノシダーゼの機能について2018

    • 著者名/発表者名
      木根啓太、砂川直樹、五十嵐圭日子、鮫島正浩
    • 学会等名
      第68回日本木材学会大会
  • [学会発表] 担子菌Phanerochaete chrysosporium由来β-xylosidaseの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      小島圭輔、砂川直樹、五十嵐圭日子、鮫島正浩
    • 学会等名
      セルラーゼ研究会第31回大会

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公開日: 2021-01-27  

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