研究実績の概要 |
スギ心材を各種溶媒抽出後、各種クロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、セファデックスLH-20ゲル)により、ノルリグナン(単量体、アガサレジノール:AおよびセクイリンC:S)の二量体10種、同三量体8種を単離した。全てについて、高分解能質量分析法により単量体構成を明らかにした。これらのうち7化合物の化学構造をNMR法により決定した。(1),(2)は単量体間の結合様式および立体配座は同じであり、(1)はSS二量体、(2)はAS二量体であった。(3),(4),(5)はSS二量体であり、互いに立体異性であった。(6)は、単量体が炭素-炭素(C-C)結合およびエーテル結合した、七員環等を有する、ASS三量体であった。(7)は、単量体がC-Cおよびエーテル結合した、1,4-ベンゾジオキサン構造等を有する、ASS三量体であった。
(A),(S)の重合に酵素反応を想定し、フェノール酸化酵素(PO)を調査した。スギ辺材外方部、移行材、心材外方部から、硫酸アンモニウム0-40%と40-70%飽和画分(粗酵素画分)を調製した。全部位において、後者にPO活性が認められ、POを分画濃縮できた。辺材(含分化中木部)では過酸化水素が無いとPO活性は減少するのに対し、移行材と心材ではその有無に関わらずそれほど変化しなかった。したがって、材部位により機能の異なるPOが優勢となることが示された。 移行材および心材粗酵素による(A),(S)の重合を試みた。SECにより、酵素反応物中の高分子化合物の存在が示された。MALDI-TOF-MSにより、(A)(S)から成る、二~五量体に相当するイオン群が検出された。HPLC-ESI-MSにより、(A)(S)の二・三量体と予想される化合物が検出された。以上より、ノルリグナン重合に酵素が関わり得ることが示唆された。
|