研究課題
本研究では,深刻な環境汚染物質であるビフェニル/PCB (polychlorinated biphenyl) を分解する Pseudomonas 属及び Rhodococcus 属細菌に注目し,そのゲノム情報やプロテオミクスからの発現情報を基に菌の育種を通じてリグニン分解生成物からの有用芳香族化合物生産を目指すことを目的としている.今年度は,これまでの解析によってビフェニル/PCB 分解細菌 Rhodococcus wratislaviensis T301 株より発見した 3 種類の色素脱色型ペルオキシダーゼに注目し,その構造と機能解析を行った.本酵素については,昨年度に Rhodococcus 属細菌の宿主・ベクター系で高発現かつ可溶化発現に成功しているが,今年度は,さらに,精製方法の確立及び活性の最適化を行い,酵素の諸性質を調べた.その結果,本酵素は,既知の色素脱色型ペルオキシダーゼや同じくビフェニル/PCB 分解細菌 R. jostii RHA1 株の細菌由来リグニンペルオキシダーゼと高い相同性を持つものの,最適 pH が異なり,また,比較的高温においても高い活性を保持していること等も分かった.また,大腸菌で発現した場合よりも比活性が高く,精製後のヘム化やマンガンの添加によって著しい活性を示すことが分かった.T301株由来の本酵素は,今後,木質バイオマス等のリグニン由来の化合物から有用化合物を生産する上で鍵となる酵素と考えられ,合成生物学的な手法における微生物の分子育種の際に導入するべき有用な遺伝子候補の一つと言える.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Int. J. Syst. Evol. Microbiol.
巻: 68 ページ: 1429-1435
10.1099/ijsem.0.002670