研究課題/領域番号 |
16H04958
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
宮藤 久士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00293928)
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研究分担者 |
巽 大輔 九州大学, 農学研究院, 准教授 (60293908)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン液体 / 木質バイオマス / フラン化合物 / 化学変換 |
研究実績の概要 |
本研究では、イオン液体を用いた木質バイオマスの化学変換法の確立を目指し、未だ解明されていない木質バイオマスの各種フラン化合物への変換における基礎的な反応機構の解明を行うと同時に、フラン化合物のイオン液体からの抽出について検討を行い、それらの知見をベースとしたフラン化合物の高収率生成プロセスの構築を研究目的としている。その中で、本年度(平成29年度)は、イオン液体中におけるセルロースおよびヘミセルロースからのフラン化合物生成メカニズムの解明およびリグニン由来化合物のフラン生成反応への影響に関する検討を行い、下記のような研究成果が得られた。 イミダゾリウム系イオン液体を用いた処理により、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)は主にセルロースから、フルフラールは主にヘミセルロースから得られることが明らかとなった。さらに、セルロースを試料とした反応系からのフラン化合物収率と、木材を試料とした反応系からのフラン化合物収率を比較した場合、セルロースを試料とした場合の方がフラン化合物収率が若干高いことが分かった。したがって、リグニンが存在することにより、フラン化合物の収率が低下したと考えられた。 一方、イオン液体中に溶解しているセルロースの有効利用を目的として、セルロース/イオン液体溶液からの製膜を行った。グリセリンを柔軟剤として添加し、酢酸セルロースとのブレンドを行った結果、良好に製膜できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(平成29年度)の研究計画では、1)イオン液体中におけるセルロースおよびヘミセルロースからのフラン化合物生成メカニズムの解明と2)リグニン由来化合物のフラン生成反応への影響を課題としていたが、両課題とも成果が得られており、学会での成果発表にも結び付いていることから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を受けて、今後(平成30年度)は当初の研究計画に従って、下記のような研究を推進していく。 1)イオン液体中におけるリグニンの低分子化メカニズムの解明 リグニンはフラン化合物を生成できる原料物質ではないが、多糖とともにイオン液体中に溶解しながら低分子化し、各種のリグニンモノマーを生成すると考えらえる。したがって、リグニンの存在が、多糖からのフラン化合物生成反応に何らかの影響を及ぼすことが想像できる。したがって、フラン化合物の高収率での生成には、イオン液体中でのリグニンの低分子化メカニズムを明らかにすることが重要である。そこで、木材から単離した摩砕リグニンについて、イオン液体中で処理した時の低分子化挙動について検討していく。このイオン液体反応系に対し、多糖の場合と同様にGPC、HPLCおよびGC-MS分析により、生成した化合物の分析を行い、イオン液体中でのリグニンの低分子化メカニズムの解明を試みる。 2)フラン化合物のイオン液体中からの抽出、単離 上記の検討で得られたフラン化合物について、イオン液体中からの抽出、単離に関する検討を行う。イオン液体は蒸気圧がほとんどないことから、減圧蒸留法が有効であると考えられる。しかしながら、一般的に多成分溶媒系では単成分の場合と蒸気圧が異なることはよく知られている。したがって、本研究で対象としているイオン液体反応系では木材からの各種成分が共存しているため、詳細な検討が必要である。蒸留に関わる温度、圧力などを変化させることで抽出されるフラン化合物の定量を行う。また、イオン液体中に残存するフラン化合物についても定量しながら、蒸留時のフラン化合物の損失が最小限となる条件を見出していく。
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