精子鞭毛運動に関する遺伝子(以下,dnaaf3)のノックアウトをゼブラフィッシュで行うにあたり,ゼブラフィッシュの各組織(精巣,卵巣,消化管,肝臓,心臓,鰓,脳,筋肉)におけるdnaaf3の発現量調査を行った。その結果,ゼブラフィッシュにおいても昨年度のドジョウと同様に,dnaaf3は精巣において特異的に高発現していることが明らかとなった。また,CRISPR/Cas9により変異を導入したF0個体が成熟したため,野生型を交配してF1を作出した。作出したF1個体由来DNAを用いて変異を確認したところ,得られたF1における変異は全て6塩基欠失であり,フレームシフト変異による終止コドンは形成されていなかった。 精子変態に関する遺伝子(以下,CREM)をCRISPR/Cas9により変異を導入したF0個体から作出したF1個体を用いて,ゼブラフィッシュにおいて変異をホモ接合でもつF2個体を作出し,その表現型からCREMの機能を行った。F1個体では9種の変異導入が確認され,8種でフレームシフト変異により終止コドンが形成されていた。そのうち,4塩基挿入の変異をもつF1個体からF2個体を作出した。CASAによる解析において,4塩基挿入の変異体精子の運動率には,ヘテロ接合変異体,ホモ接合変異体ともに野生型との間に有意差は見られなかった。また,F0で見られたような外部形態における異常な鞭毛を持つ精子はF2では観察されなかった。変異体が産出した精子の倍数性は、野生型と同じ半数性であった。ホモ接合変異体の精子は受精能を持つことが確認された。また受精率は野生型よりとの低い傾向が見られたが、群間に有意差は認められなかった。この受精実験により得られたF3個体では変異の伝達が認められ,4塩基挿入による変異では精子は正常に形成されることが明らかとなった。
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