研究課題
本研究は、サケ科魚類においてインスリン様成長因子（IGF）とその結合蛋白（IGFBP）による成長の調節メカニズムを理解するとともに、それらをツールとして用いて各地域における増養殖業に応用することを目的としている。本年度は以下の成果を得た。ツール作り：IGFBP-1aと-1bの新規サブタイプ（1a2と1b2）のcDNAをクローニングした。そして、両者をチオレドキシンとヒスチジンタグを付加した融合組換え蛋白として大腸菌発現系を用いて発現させた。融合組換え蛋白をニッケルアフィニティークロマトグラフィーにて精製した。これらはIGF-I結合能を有していることが確認された。また、IGFとIGFBPの脳下垂体における成長ホルモン（GH）分泌調節作用を詳細に解析するため、GHの時間分解蛍光免疫測定法を精製シロザケGHを用いて再確立した。指標確立：昨年度はIGFBP-1aのTR-FIAを確立した。本年度は、抗rsIGFBP-1a抗体に反応し、かつIGF-I結合能を持つ機能的IGFBP-1aを測定するリガンド免疫測定系（LIFA）を開発した。これにより、総IGFBP-1aと機能的IGFBP-1aを測り分けることが可能となった。養殖への応用：ノルウェー・ノース研究所（ユニ研究所から名称変更）とのニジマス養殖に関する共同研究で、光周期と水温を組み合わせた飼育実験を行った。血中IGF-IとIGFBP-1bを指標とした結果、ニジマスの成長は海水中で停滞していたことが示唆された。また、宮城県において、秋にスモルト化するサクラマス系群を解析し、春・秋スモルトは基本的に同様の生理的機構によって起こることを示唆した。一方、宮崎県では在来ヤマメを海水に移行し、海水中で一定期間生存した個体からF1世代を得た。このF1世代は、高い海水適応能を有しており、海面養殖用種苗として有用であると考えられた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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