研究課題
海綿動物からは多くの二次代謝産物が単離、報告されており、それら化合物の多くは抗菌、抗真菌、細胞毒性に加え疾病関連の標的分子にも活性を示すことから、海綿動物は未利用生物資源として有用である。しかしながら、天然資源から供給できる化合物量には限界があり、海洋由来の天然物を応用開発するためには、化合物供給という問題をクリアする必要がある。この問題を解決するためには、化合物の生産者および生合成遺伝子を明らかにし、生産生物の培養あるいは異種生物による生産をおこなう必要があるが、海洋天然物の生産者および生産機構を特定した研究はほとんどない。本研究では 、海綿動物の生活環における微生物叢の変遷 を解析することで、生産者の特定と生産機構の解明を研究の目的とする。昨年度までに、ある種の海綿動物に関して世界で初めて海綿動物の完全養殖を達成し、各生活環において細胞毒性物質の推定生産微生物および生合成遺伝子が含まれていることを、マイクロビオーム解析、メタゲノム解析で明らかにすることができている。本年度は、推定生産微生物の可視化を目指し、繁殖期に幼生を固定しパラフィン切片を作製した。推定生産微生物の様々な遺伝子を標的に作製したFISHプローブを設計し、in situハイブリダイゼー ションを実施した。しかしながら、海綿動物由来の細胞が非常に強い自家蛍光を発し、観察が困難であった。そこで別途、当該海綿から調製した微生物懸濁液を対象にFISHを実施した。現在、詳細な条件検討を実施し、フローサイトメトリーでの分離を試みている。
2: おおむね順調に進展している
これまで予定の計画以上に目的を達成してきていたが、標的の共生微生物の可視化という最後のステップでやや時間を要している。最終年度で再度、試料を採集し目的を達成する。
研究対象のカイメンの繁殖期に、様々な手法で試料を固定し、また複数の標的遺伝子に対するFISHプローブを作製することで生産微生物の可視化を試みる。さらに同じ繁殖形態を持つ他種カイメンに対しても、本研究と同じ手法を用いることで、有用二次代謝産物の生合成遺伝子および生産者の同定を実施していく。次年度は申請研究の最終年度であるが、今後も継続して本研究で開発したカイメンの生活環を回すことで得られる試料を生命現象の解明につなげていく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
J. Nat. Prod.
巻: 81 ページ: 1108-1112
10.1021/acs.jnatprod.8b00101
巻: 81 ページ: 1295-1299
10.1021/acs.jnatprod.8b00180
Tetrahedron Lett.
巻: 59 ページ: 2532-2536
10.1016/j.tetlet.2018.05.033
巻: 81 ページ: 2595-2599
10.1021/acs.jnatprod.8b00591