研究課題/領域番号 |
16H04981
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
太田 耕平 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10585764)
|
研究分担者 |
Mohapatra Sipra 愛媛大学, 南予水産研究センター, 助教(特定教員) (80715441)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 性的可塑性 / 性転換 / エピジェネティクス / 生殖腺 / 魚類 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究成果から、魚類生殖腺の生殖細胞および体細胞の各分化段階において特異的に発現する転写関連因子、成長因子、ステロイド代謝酵素遺伝子などの性関連遺伝子に関する解析系が整備されると共に、卵と精子の起源となる生殖幹細胞とそれを支持する体細胞からなる特定の細胞群(起源細胞群)が魚類生殖腺の性的可塑性において中核的な機能を果たすことが示唆された。そこで本年度は、性転換モデル魚として実験系を構築しているホシササノハベラの雌雄および性転換中の生殖腺を用いて、これらの細胞群の特性や遺伝子発現パターンを解析すると共に、それらの細胞の可視化方法と分取方法に関する検討を行った。その結果、起源細胞群のうちの生殖幹細胞はoct4、未分化体細胞はsox9bを特徴的に発現していた。また、蛍光基質を用いてこれらの細胞を可視化することに成功すると共に、セルソーターによる蛍光強度と細胞サイズ等の解析から、それぞれの細胞を分取する方法を確立した。一方で、雌雄の生殖腺において発現量に差の見られる遺伝子、すなわち、卵巣体細胞で高く発現するステロイド代謝酵素cyp19a1と精巣体細胞で高く発現する転写関連因子dmrt1については、その転写開始点の上流の転写調節に関わると想定される領域にDNAメチル化が起こる特徴的な配列部位が複数存在することを見出すと共に、これらの領域のDNAメチル化パターンに卵巣組織と精巣組織との間での違いが見られることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は生殖腺の性的可塑性の中核的な機能を持つと予想される細胞の分取方法を検討した。細胞分取の過程で、得られた細胞集団の中でもさらに分化段階の異なるものの存在が明らかとなったことから、この本質も見極めることに時間を要したが、最終的に目的とする細胞を分取する方法を確立することができた。その他の実験に関しても、概ね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
性転換魚モデル(ホシササノハベラ)と雌雄異体・海産魚モデル(カタクチイワシ)を用いて、 生殖腺体細胞の性的可塑性を司るエピジェネティクス機構を明らかにしていく。今回構築した細胞の可視化・単離技術をを元に、in vivo への移植実験や in vitro での培養実験を合わせて、性的可塑性に関わる体細胞の機能解析を行うと共に、特定遺伝子発現調節領域のメチル化パターンの解析等により、体細胞の性的可塑性に関するエピジェネティクス機構を解析する。これらの結果を種間で比較することにより、生殖腺の性統御に関わる共通原理を明らかにする。
|