研究課題/領域番号 |
16H04982
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中尾 実樹 九州大学, 農学研究院, 教授 (50212080)
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研究分担者 |
杣本 智軌 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
長澤 貴宏 九州大学, 農学研究院, 助教 (70775444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 魚類 / 補体 / 補体制御因子 / ホメオスタシス / 創傷治癒 / 生体防御 / 免疫 |
研究実績の概要 |
体全体が粘膜組織に覆われている魚類にとって、その粘膜上皮の健全性は病原微生物の侵入・感染を防御する第一線を左右する。本研究は、魚類補体制御因子CD46およびアポトーシス細胞認識分子として機能する補体成分C1qおよびプロパージンが果たすホメオスタシス機能に着目し、魚類上皮組織の健全性に基づくバリア機能と補体系との関連を解明することを目的とした。 まず、CD46の特異的機能阻害および高感度検出に必要な抗体を作成した。pCold-Iベクターによって大腸菌で発現させたコイCD46のSCR1-2ドメインおよびSCR3-4ドメインを精製し、これらでウサギを免疫して抗血清を得た。これらポリクローナル抗体の特異性を、コイおよびギンブナの上皮細胞株KF-1およびCFSを用いて解析するとともに、これらと、すでに樹立済みのモノクローナル抗体をプローブとして用い、本年度は下記の知見を得た。 KF-1細胞を上記抗体で処理してCD46を活性化すると、KF-1細胞の接着能が上昇した。さらに、KF-1は抗体で表面をコートした培養プレートに対して接着亢進を示した。一方、KF-1細胞の増殖を指標とした創傷治癒モデル実験において、上記抗体はKF-1細胞の増殖を有為に促進することが判明し、CD46が体表の創傷治癒に重要な役割をはたすことが示唆された。以上の結果から、体表の上皮細胞において、CD46は増殖や接着能に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。 その他の補体成分については、体表粘液中から、補体活性化の正の制御因子であるプロパージン単タンパク質を検出することに成功したことから、体表におけるプロパージンのホメオスタシス機能についても解析を進める基礎的知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コイCD46に対する抗体作製が順調に進んだ。また、それら抗体の特異性も満足すべきものであった。さらに抗体を用いた機能解析においても、当初予想したようなCD46による上皮細胞の増殖等の機能に対する影響を認めることができた。CD46以外の補体成分・補体制御因子についても、これまでに樹立していた抗体を用い、体表粘液中のプロパージンをウエスタンブロットで検出することに成功したので、今後、プロパージンのホメオスタシス機能を評価するための基礎的知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定した抗体作製や特異性検定には成功しているので、CD46については、上皮細胞株を用いたより詳細な機能解析を行う予定である。具体的には、上皮細胞シートの完全性を評価するTransepitherial electric resistanceの測定と、上皮細胞シートを介したFITC-デキストランの通過試験である。そのためには、KF-1細胞やCFS細胞の、各種メンブランセル上での培養条件を確立する必要がある。また、CD46以外の補体成分・補体制御因子については、さらに多様なタンパク質に対する抗体を樹立して、研究対象の幅を広げていく予定である。
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