研究課題/領域番号 |
16H04983
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北野 健 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40336219)
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研究分担者 |
中村 將 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 参与 (10101734)
井尻 成保 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90425421)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コルチゾル / 環境依存的性決定 / メダカ / ウナギ / ミツボシキュウセン |
研究実績の概要 |
1.メダカ脳におけるコルチゾル誘導機構の解析 コルチゾルは、高温等のストレスに応答して副腎(硬骨魚類では頭腎)で合成されるステロイドホルモンであり、この合成の引き金は、脳からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)やアルギニン・バソトシン(AVT)の分泌によると考えられる。そこで今年度は、ゲノム編集技術を利用してこれらのノックアウトメダカ系統を作製した。 2.メダカ生殖腺におけるコルチゾル雄化誘導機構の解析 通常水温飼育個体、高温飼育個体、コルチゾル処理個体等の生殖腺領域を用いて、次世代シークエンス解析を実施した。その結果、高温飼育個体及びコルチゾル処理個体両方で発現量が上昇する80遺伝子と減少する41遺伝子を同定した。 3.阻害剤等が及ぼすミツボシキュウセン及びウナギへの影響調査 性転換におけるコルチゾル-エストロゲン-精巣分化関連遺伝子(dmrt1, gsdf)の関係を調べることを目的に、ミツボシキュウセン雄個体にエストロゲン処理することで精巣から卵巣への転換(雌化)を誘導し、精巣分化・維持に関与するdmrt1の発現動態を免疫組織化学的に調べた。精巣においては、dmrt1は生殖腺体細胞(支持細胞)特異的に発現していた。最終的に、エストロゲン処理によって誘導された成熟卵巣組織ではdmrt1の発現が消失していたことから、エストロゲン処理によりdmrt1の発現が抑制されたと考えられた。一方、ウナギにおいては、シラスウナギに様々な期間エストロゲン投与(10mg/kg-餌料)を行い、全長15cmまでに投与をやめると雄になり、遅くとも15cm以降にエストロゲン処理を行うと雌になることが分かった。このことから、ウナギの性決定は全長15cm以降であることが初めて示唆された。シラスウナギからの100mg/kg-餌料のメチラポン投与では,全長30cmまで飼育しても雌個体は出現しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに研究が進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
メダカについては、今年度作製したCRHやAVTノックアウトメダカにおけるコルチゾル量を測定して、メダカ脳におけるコルチゾル誘導機構を明らかにする。また、今年度同定した高温飼育個体及びコルチゾル処理個体両方で発現量が上昇する遺伝子と減少する遺伝子について、ノックアウトメダカ系統を作製する。一方、ミツボシキュウセンの性転換において、dmrt1と並んでgsdfが精巣分化・精子形成に重要な役割を果たしていると報告されている。そこで、抗ミツボシキュウセンGsdf抗体を作製し、エストロゲン処理による雌化時におけるGsdfの発現動態を調べる。また、コルチゾル処理による卵巣から精巣への転換においてGsdfとDmrt1の発現動態を調べる。双方向の性転換を解析することにより、コルチゾル-エストロゲン-精巣分化関連遺伝子の相互関係を考察する。さらに、ウナギにおいては、シラスウナギから全長15cm前後まで通常飼育し、その後に昨年の10倍高濃度のメチラポンを投与し、形態的に性分化が明らかとなる30cmまで育てて雌の出現割合を調べる。また、サンプリング時の血中コルチゾル量を測定し、メチラポンの効果を検証する。
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