研究課題/領域番号 |
16H04989
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
大浦 裕二 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (80355479)
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研究分担者 |
山本 淳子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食農ビジネス推進センター, 上級研究員 (00355471)
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 専任講師 (00569494)
新開 章司 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (30335997)
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30401714)
吉田 晋一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (50469839)
櫻井 清一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (60334174)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共分散構造分析 / 青果物消費 |
研究実績の概要 |
2017年度は、量的消費研究Gでは青果物消費構造についてのWebアンケート調査を実施および分析を行い、質的消費研究Gでは昨年度の質的調査データを用いて分析を行った。 1)簡素化した食行動記録調査で収集したデータを用いて、青果物消費水準に与えるソーシャル・キャピタル(SC)の影響を考察した。SC水準の高い回答者は総じて青果物消費水準も高い傾向が確認された。複数の要因を考慮した重回帰分析の結果からも、SCの蓄積が青果物消費水準にポジティブな影響を及ぼしていることと、青果物消費に対し年齢に次ぐレベルの説明力があることが明らかになった。 2)共分散構造分析を用いて、年齢等の消費者属性間で生鮮野菜とカット野菜の購買頻度が異なる理由について、「食の志向」が影響した点を実証した。生鮮野菜購買頻度に対して、「健康志向」が正、「簡便化志向」が負の影響を及ぼしており、特に若年層に対して、健康を意識してもらうことや、「簡便化志向」から脱却して調理活動を促すことが生鮮野菜消費を伸ばす上で有用である。 3)所得階層に着目し、野菜摂取割合別に食事に対する満足度を明らかにした。Webアンケート調査で収集した1,217人の回答者による2,078の食事データ及び消費者属性のデータを用いて、所得階層別に野菜摂取割合別の満足度を二項ロジスティクス回帰分析により把握した。野菜の摂取割合にかかわらず不満を示す値はみられず、全体として消費者は食事に概ね満足していることが確認された。また、低所得層に特有の傾向として、朝食・昼食・夕食のすべてで、食生活を重視することと野菜摂取割合が高いことに関連が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度では、1)青果物消費の規定要因摘出と要因間の因果関係の定性的整理、2)家計調査個票による需要関数の計測と規定要因摘出、3)消費構造モデルの構築と大規模アンケート調査による検証、4)諸外国における青果物摂取に関わる政策的取り組みと成果の把握 の4つを計画していた。 このうち、1)青果物消費の規定要因摘出と要因間の因果関係の定性的整理、および3)消費構造モデルの構築と大規模アンケート調査による検証については、研究成果として取り纏め、学会報告および学会誌に投稿(現在印刷中)であることから、当初の計画以上に進展している。2)家計調査個票による需要関数の計測と規定要因摘出については、家計調査個票利用の許可が下りたため、現在、品目別需要関数のモデル化を行っているところであり、やや遅れて進行している。4)諸外国における青果物摂取に関わる政策的取り組みと成果の把握については、フランス国にて消費者およびOECDの研究員を対象に、青果物消費実態についてのヒアリング調査を行い、現在、フランス国内および各国の青果物消費の実態について整理しているところである。なお、アメリカ合衆国については、次年度に調査を実施する予定である。 以上の各課題の進捗状況を総合的にみると、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の計画は以下の通りである。 1.社会的弱者に適した「フレ―ミング」の作成(主に実験的研究グループが担当):共分散構造分析や諸外国でのヒアリング結果等の成果を踏まえて、社会的弱者に適した青果物消費拡大のための複数の「フレーミング」を作成する。 2.複数の「フレ―ミング」を提示した購買行動実験(主に実験的研究グループが担当):作成した「フレーミング」及び行動経済学分野のフレーミング理論をもとに、購買行動実験を設計し、実施する。その結果から、青果物消費の増加が期待できる「フレ―ミング」を特定する。①WEBによる実験:被験者は記録調査を実施した2地域、各500人、計1,000人を予定している。また、調査時期は2018年11月を予定している。実験方法については、2017年度の研究結果で青果物消費に影響があった変数など15項目を想定し、リフレ―ミングした内容を提示する場合としない場合で、消費者の購買意欲と実際の購買頻度や量がどの程度変化するかを計測する。②アイトラッカーによる実験:リフレ―ミングの情報を提示した場合の効果を計測するために、注視点及び発話データをアイトラッカーを用いて記録し、リフレ―ミング情報を見たときの意識状態や注目度を解析する。なお、被験者は60人を想定している。 3.青果物消費拡大への取り組みに関する調査・研究交流(主に質的消費研究グループが担当):実効性の高い政策提言に向けて国内外の農業経済学及び関連分野(栄養学、食品流通等)の研究者、政策担当者への調査及び意見交換を行う。その際、本研究の成果を提示しコメントを得る。 4.青果物消費の規定要因を踏まえた消費拡大方策の検討(全員):3年間で得られた知見を総合的に検討し、消費者が取り入れやすいコンテクスト(文脈)や表現等の観点から具体的な青果物の消費拡大方策を明らかにし、3 年間の研究成果として取り纏める。
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