研究実績の概要 |
2018年(平成30年)段階では、ため池は全国に約20万箇所存在するとされている.農林水産省のため池一斉点検調査(平成29年3月末時点)では、レベル1地震に対して2,434か所で耐震不足であることが報告されているが、レベル2の大規模地震に対する安全性については、2,3の自治体で照査している段階で、喫緊に取り組むべき課題として指摘されており、堤体破壊に進展する超大ひずみレベル(大変形)での土の強度特性の解明とその解析モデルの適用性の検証と評価システムの開発が不可欠である. 平成30年度は、これまでに得られている堤体土の強度低下モデルを「すべり破壊発生後の超大ひずみレベル」まで拡張した「一般化標準強度低下モデル」の妥当性を明らかにした。具体的には、地震によって破壊した実際のため池堤体と遠心力実験装置による模型振動実験結果を対象として、堤体の進行性破壊モードや変形量などから統合的耐震診断システムの適用性を明らかにした。 (1) 塑性すべり解析で得られた最大変位量は122cmに達しており、実際の堤体の崩壊を説明できる非常に大きなすべりが発生する結果となった。また、解析によるすべり面の位置も実際の位置と整合しており、モデルと解析の適用性を確認した。 (2) 土の剛性・強度の劣化を考慮した有限要素解析と遠心実験との比較では、両結果共に天端の加速度応答が入力加速度200gal以前の再現性に優れている。一方、250gal~400galのステージでは、応答の増幅は見られず、堤体の破壊による減衰を反映した挙動を把握できている。 (3) 「堤体土の標準強度低下モデル」とそれを導入した「塑性すべり解析」、「弾塑性有限要素解析」を適切に連携運用することによって、ため池の堤体規模に応じた安全性を天端沈下量として定量的に評価することが可能であり、この統合的耐震診断システムの信頼性を確認した。
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