研究課題/領域番号 |
16H04996
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中丸 治哉 神戸大学, 農学研究科, 教授 (80171809)
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研究分担者 |
多田 明夫 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00263400)
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業工学 / 洪水灌漑 / スーダン / ガッシュデルタ / リモートセンシング / 蒸発散量 / DEM |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究実績は,以下のようにまとめられる. (a)圃場面の微地形が水供給に及ぼす影響についての検討:既往の検討では,空間分解能30mのDEM(ASTER GDEM)に基づいて,ガッシュデルタの耕作圃場における圃場面の起伏度を評価してきたが,同DEMにはかなり大きなノイズが含まれるとの指摘がある.そこで,空間分解能5mのDEM(AW3D)に基づいてカッサラブロックの等高線図を作成するとともに,起伏度,傾斜の分布状況を把握した.これを蒸発散量の空間分布図,複数年のNDVIの空間分布図と対比した結果,圃場面の微地形に従って水が供給されている箇所がある一方,必ずしもそうではない箇所も少なくなく,微地形だけが水供給の多寡を決める訳ではなく,営農方法などの要因も関与していることが示唆された. (b)衛星リモートセンシングに基づく土地利用分類:これまでの検討において,最近4年間に取得された衛星画像データに基づいてガッシュデルタの土地利用を判別する決定木分類を実施し,耕作面積が約3万haから8万haの範囲で年ごとに変動すること,3年ローテーションが主体の灌漑ブロックと2年ローテーションが主体の灌漑ブロックの両者が存在することを示しているが,それらの結果を取りまとめて国際誌に投稿した(現在審査中). (c)ワークショップの実施:平成31年1月10日(木)に神戸大学瀧川記念学術交流会館において「アフリカ乾燥地域における洪水灌漑の評価と改善に関するワークショップ」を開催し,本研究の中間報告を実施した.このワークショップには,海外研究協力者であるスーダン農業研究機構(ARC)のBashir博士,Khalid博士を招聘し,両名は衛星リモートセンシングのガッシュデルタへの適用に関する研究報告を行った,さらに,同機構のAdil副所長,Kamal教授も招聘し,両名は基調講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圃場面の微地形が水供給に及ぼす影響についての検討,及び,衛星リモートセンシングに基づく土地利用分類については,それぞれ予定通りに進捗している.ただし,成果の公表については,研究発表3件,著書1件で,平成30年度内に採択に至った論文がないが,土地利用分類に関する研究については国際誌に投稿済みで現在審査中であり,圃場面の微地形が水供給に及ぼす影響については,平成31年度に投稿する論文にその成果を反映させる予定である. 当初計画では,平成30年度に神戸大学で第1回のワークショップを開催して中間報告を行い,平成31年度にスーダン・ワドメダニの農業研究機構(ARC)で第2回のワークショップを開催して最終報告を行うこととしていた.研究実績の概要において述べた通り,神戸大学で第1回のワークショップを開催していること,さらに同ワークショップ後の打ち合わせで,令和元年12月中旬に農業研究機構(ARC)で第2回のワークショップを開催することについてスーダン側の了解を得ていることから,中間報告,最終報告に関しては当初予定通りに進捗している. 以上,現在までの進捗状況を総合的に見れば,研究成果の論文による公表については,令和元年度での進捗が期待できることを踏まえて,概ね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる令和元年度は,ガッシュデルタにおける2回目の現地調査を実施し,圃場内の微地形と水供給の関係,土地利用分類の結果について,現地検証を実施する.具体的な研究実施計画は,以下の通りである. (a)圃場面の微地形が水供給に及ぼす影響についての検討:空間分解能5mのDEMに基づく検討から,圃場面の起伏度,傾斜の分布状況を把握し,これらを蒸発散量の空間分布図,NDVIの空間分布図と対比した結果,圃場面の微地形だけが水供給の多寡を決める訳ではなく,営農方法など微地形以外の要因も関与していることが示唆されている.そこで,カッサラブロック内で特に水が集中している場所,水がほとんど供給されていない場所をターゲットとして現地圃場での踏査を実施して,平成30年度の解析結果を検証するとともに,営農方法についての聞き取り調査を実施する.その上で,圃場内に灌漑水を均等に配分するための方策を検討する(多田,田中丸). (b)衛星リモートセンシングに基づく土地利用分類:これまで,衛星リモートセンシングで観測された植生指標等を利用した決定木分類による土地利用分類を試みてきた.その結果からブロックによる耕作ローテーション(圃場で2年毎ないし3年毎に耕作するローテーション)の違いが推察されている.そこで,現地での聞き取り調査を実施して,耕作ローテーションの推定結果の妥当性を検証するとともに,ローテーション方法の決定要因を調べる(藤原). (c)農業研究機構(ARC)におけるワークショップの開催:神戸大学において実施した1回目のワークショップに引き続いて,スーダン・ワドメダニのARCにおいて2回目のワークショップを開催し,これまでの研究成果の取りまとめを行うとともに,残された課題を整理し,今後の研究方針についてのディスカッションを実施する(田中丸,多田,藤原,Bashir,Khalid).
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