研究課題/領域番号 |
16H04998
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
治多 伸介 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (60218659)
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研究分担者 |
藤原 拓 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (10314981)
中野 拓治 琉球大学, 農学部, 教授 (30595202)
山岡 賢 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, ユニット長 (70373222)
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70447514)
久米 崇 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80390714)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農業集落排水 / 汚泥再利用 / 医薬品 |
研究実績の概要 |
「生活排水に含まれる医薬品」は,人の健康や生態系に悪影響を及ぼす新たな環境汚染物質として世界的に対応が急務とされている.医薬品は水環境に加え,下水処理施設の汚泥にも混入し,汚泥が農地還元される際には,農作物に移行する可能性があるため,その実態と対策の解明が重要課題となってきている.そこで,本研究では,日本農村の代表的な生活排水処理施設である農業集落排水施設の「①生汚泥」と「②生汚泥を農地還元用に処理した調整汚泥(乾燥汚泥,コンポスト,炭化汚泥など)」への医薬品混入実態と「③調整汚泥を利用した農地」での医薬品動態を明らかにし,集落排水汚泥の農地還元の安全性を評価するとともに,安全性を高める方策を解明することを目的とした.平成29年度は,①については,様々な処理方式の実施設(9施設)おいて,主に医薬品含有量の季節変化と含有量に及ぼす影響要因についての検討を実施した.それにより,医薬品含有量の季節変化が明確な医薬品は少ない一方で,医薬品含有量に強い影響を及ぼしている要因の一つは生物処理方式の違いであり,活性汚泥法の汚泥が,生物膜法の汚泥よりも医薬品含有量が低くなりやすいという特徴などを見出した.②については,実施設と室内実験により,実態解明と医薬品濃度を低下させる方策を検討した.それにより,いずれの汚泥調整によっても,汚泥の医薬品濃度の低下効果が存在することを明らかにした.そして,調整方法の違いは,医薬品含有量の低下程度に影響は及ぼす一方で,調整温度や調整時間が,低下効果の大小に大きな影響を与えていると考えられた.③については,モデル圃場実験と室内実験によって,医薬品の作物への吸収特性と,土中での分解特性の検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農業集落排水施設の生汚泥と調整汚泥への医薬品の混入実態と,混入量への影響要因の解明については順調に進行し,混入実態の特徴とともに重要な影響要因を明らかにすることができた.「調整汚泥を利用した農地」での医薬品動態の解明は,当初計画よりは,やや遅れ気味となったものの,大きな問題は無しに進行している.
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定通り進んでいるので,当初計画に沿った研究を進める.すなわち,これまで行ってきた生汚泥の医薬品濃度を低下させる条件の現場検討は継続する.また,調整汚泥については,実際の現場において,コンポスト汚泥について作成条件を変化させて,その効果を検討する.また,室内実験により,嫌気性消化などの条件を変化させて,その効果を検討する.さらに,モデル圃場では,実施設から採取した乾燥汚泥とコンポスト汚泥を使っての畑作物を栽培し,作物体(部位別)・土壌(深さ別)などの医薬品含有濃度を分析するとともに,土壌の種類を変化させた室内での医薬品分解試験を実施する.平成30年度は最終年度であるため,全ての研究結果を統合して,集落排水汚泥の農地利用における医薬品の安全性を評価し,その安全性の更なる改善策を提示する.
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