研究課題
「生活排水に含まれる医薬品」は,人の健康や生態系に悪影響を及ぼす新たな環境汚染物質として世界的に対応が急務とされている.医薬品は水環境に加え,下水処理施設の汚泥にも混入し,汚泥が農地還元される際には,農作物に移行する可能性があるため,その実態と対策の解明が重要課題となってきている.そこで,本研究では,集落排水汚泥の農地還元の安全性を評価するとともに,安全性を高める方策を解明することを目的とした.そして,平成30年度は,現場調査,室内実験,モデル圃場での畑作物の栽培試験などを実施した.その結果,生汚泥において比較的残留性が高い医薬品は,微生物分解され難く,オクタノール/水分配係数(Kow)が高めの成分であり,例えば,Benzophenone(紫外線吸収剤),Azithromycin(抗生物質),Crotamiton(鎮痒剤)であると考えられた.また,解熱鎮痛消炎剤や抗生物質では,使用量が増加する冬季に,濃度が高まる傾向が明確となった.その一方で,汚泥貯留槽での汚泥貯留時間を長めに,また,悪臭発生防止につながる曝気を頻繁に行えば,汚泥中の多くの医薬品濃度を大きく低下させることができることが明らかとなった.さらに,乾燥,コンポスト化,炭化などの汚泥調整は,広範な医薬品の分解に有効であり,特に,温度を高く,滞留時間(処理時間)を長く設定することで,その有効性は高くなることなどが確認された.また,汚泥を利用した農地においては,作物体への移行は起こりうるが,その移動量は少量であることなどが示された.以上の結果と,昨年度まで研究結果を統合することで,農業集落排水施設の汚泥の安全性の高さが示されたとともに,更に,その安全性を高めるための汚泥貯留槽の管理や調整汚泥作成の留意点を明らかにすることができた.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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