研究課題/領域番号 |
16H05001
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小出 章二 岩手大学, 農学部, 教授 (70292175)
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研究分担者 |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 穀物 / 農産食品 / 保存 / 水分活性 / ガラス転移温度 / LCA |
研究実績の概要 |
平成28年度は、穀物・農産食品の水分活性を種々の保存条件(温度・湿度)下で測定した。サンプルとしてアルファ化玄米、アルファ化色素米、乾燥ニンジンパウダーを用い、これらの平衡含水率と水分平衡時のガラス転移温度を計測した。その結果、アルファ化玄米とアルファ化色素米の水分収着等温線はGAB式を用いて高い精度で表現できること、平衡含水率の温度依存性は極めて小さいことが示された。次にサンプルのガラス転移温度(Tg)は、各湿度条件下で複数点観測された。観測されたTgは湿度の増加に伴いわずかに温度が低下したものの、全て常温より高い温度であった。一方、ニンジンパウダーの水分収着等温線はGAB式を用いて表現できるが、平衡含水率は温度に大きく影響された。またTgは水分活性0.87において-74℃、水分活性0.11において45℃となり、水分活性(平衡相対湿度)の影響を強く受けることが示された。このTgをGordon-Taylorモデルにあてはめたところ精度よく測定値を近似できた。 以上、本研究の主目的である「穀物・農産食品の状態図(ガラス転移温度、含水率と水分活性との関係図)の作成および長期保存条件の提案」が可能となった。現時点では、長期保存条件は、サンプルが低水分活性領域にありTgが室温より高いことが推奨されるが、その条件が保存中の品質保持に効果的か否かは、保存試験中の品質試験をもって検討する。 更に本研究では、青果物長期貯蔵・流通を想定して、日本から台湾に輸出されるリンゴのシステムバウンダリを構築し、環境影響評価に関する予備的解析を行った。その結果、(1)リンゴの栽培と日本国内のトラック輸送がホットスポットであること(2)生体毒性および淡水毒性へ及ぼす影響が大きいこと(3)低温貯蔵およびCA貯蔵に伴う環境影響物質の排出は小さいこと、を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は最終的に、①穀物・農産食品の高品質長期保存に必要な水分活性とガラス転移温度を測定し最適保存条件を提案すること、②農産食品の長期保存における品質・水分や理化学的特性の計測・評価、③ライフサイクルアセスメント手法を用いた環境負荷やコスト評価を行うことを目標としている。 現時点で、①に関しては計測・解析手法等の問題点はクリアーしており、②・③についても一年目としては順調である。よって研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、穀物・野菜の他に果物もサンプルに加えて測定を行う。今年度は、本研究費で購入した真空凍結乾燥機も活用して他の乾燥法とは表面構造が異なる農産食品に対しても測定・評価を行う。測定項目は、昨年度と同様、種々の温湿度条件下での平衡含水率とガラス転移温度のデータを取得し、この結果から最適な保存条件について理論的に提案する。 次に、サンプルを種々の保存条件下で長期保存する。保存試験ではサンプルの品質や理化学的特性の経時変化を測定するとともに官能試験も実施し、提案された最適保存条件で得られた値と比較する。 また、ライフサイクルアセスメント手法を用いて穀物・農産食品の乾燥・保存条件における環境負荷について解析し、そのホットスポットを明確化するとともに、プロセスの改善ポイントを明らかにし、環境面から見た最適乾燥・保存条件について検討する。 その後(平成30年)は、プロバイオティクス乳酸菌を用いた穀物・農産食品の発酵・製造、およびそのバイオプレザベーション効果を測定・検討し、これまでの知見をベースとして、高品質長期保存の新しい展開について考える。
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