研究課題/領域番号 |
16H05015
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
万年 英之 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20263395)
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研究分担者 |
小林 栄治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, ユニット長 (00186727)
大山 憲二 神戸大学, 農学研究科, 教授 (70322203)
笹崎 晋史 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50457115)
本多 健 神戸大学, 農学研究科, 助教 (10432551)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウシ / 脂肪酸組成 / 責任遺伝子 / 全ゲノムリシーケンス / 関連解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ウシ体脂肪の脂肪酸組成に関る新規責任遺伝子の同定と、責任遺伝子の分子機構の総合的解明を目的としている。本研究では、ゲノムワイド関連解析、リシーケンス解析、複数品種の候補責任変異を用いた関連解析、責任遺伝子のプロモーター等の分子機能解析を通して、ウシの脂肪酸組成に関与する遺伝子群の全容を明らかにすることを目的とする。 本年度は以下のサブテーマを実施した。①全ゲノムリシーケンス解析により、候補遺伝子と候補変異の抽出を行った。②VNN1遺伝子を候補として、変異解析と検証集団を用いた妥当性確認を実施した。 本研究では、全ゲノムからオレイン酸含有率に関わるDNA領域を絞り込むため、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、第9番染色体(BTA9)に3つ、BTA14に1つの有意水準を満たすSNPが認めている。本年度はBTA9の候補領域に対しての検討を行った。 全ゲノムリシーケンス解析およびPathway解析により脂質代謝に関係しているvanin1(VNN1)を候補遺伝子として研究を進めた。VNN1の全翻訳領域を対象とした多型探索を行い、その結果アミノ酸置換を伴うc.197C>Tを検出した。VNN1 c.197C>Tは非同義置換をともなう多型であり、スレオニン(極性)からメチオニン(非極性)へとアミノ酸置換が生じる多型であった。VNN1 c.197C>Tに対し702頭集団を用いて、オレイン酸含有率に対する効果の検証を行った。その結果、702頭集団におけるANOVA検定によるp値は0.0037を示し、非常に高い有意差が認められた。これは、GWASで得られたHapmap43702-BTA-84086のp値は0.056よりも低い値を示したことから、VNN1 c.197C>Tはよりオレイン酸含有率に対しより強い効果を持つと考えられ、より良いDNAマーカーを同定できたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は以下のサブテーマを実施した。①全ゲノムリシーケンス解析により、候補遺伝子と候補変異の抽出を行った。②VNN1遺伝子を候補として、変異解析と検証集団を用いた妥当性確認を実施した。 本研究では、全ゲノムからオレイン酸含有率に関わるDNA領域を絞り込むため、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、第9番染色体(BTA9)に3つ、BTA14に1つの有意水準を満たすSNPが認めている。本年度はBTA9の候補領域に対しての検討を行った。 予定通り全ゲノムリシーケンス解析を実施し、加えてPathway解析により脂質代謝に関係しているvanin1(VNN1)を候補遺伝子とすることができた。VNN1の全翻訳領域を対象とした多型探索を行い、その結果アミノ酸置換(スレオニン(極性)からメチオニン(非極性))を伴うc.197C>Tを検出した。この変異に対し検証集団を用いた解析により、非常に高い有意差が認められた。この結果は、本年度検出したVNN1 c.197C>Tはよりオレイン酸含有率に対しより強い効果を持つと考えられ、より良いDNAマーカーを同定した位置づけることができる。 これらの結果に対し、その成果を国際学会誌2報受理されており、国際学会において4演題の発表、国内学会において3演題の発表を行っている。そのうち、国内学会発表では優秀発表賞を受賞している。これらの成果は、本研究課題が順調に進捗していることを裏付けている。
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今後の研究の推進方策 |
BTA9のVNN1は有力な候補遺伝子・候補変異であるが、その他の変異も候補となり得る。現在のところ、その他候補となり得る2遺伝子を抽出しており、これらに対する妥当性確認を実施する。また、BTA14に対する候補遺伝子解析も実施予定である。得たリシーケンスゲノム情報から候補染色体領域を探索し、特にタンパク質の翻訳領域の非同義置換を伴う変異、非翻訳領域やプロモーター領域における変異をピックアップし、これらを候補責任変異とする。特に脂肪代謝に関連する遺伝子に対しては、特段の注意を払って変異を選択する。 リシーケンスデータから抽出された各候補染色体領域に対する候補変異に対し、試験集団および検証集団を用いた関連解析を行う。BTA14においても20~50程度の変異が候補変異になると予想している。これら変異に対する関連解析により、どの候補変異が不飽和脂肪酸含有率に最も効果を有するかを検討する。 上記で同定した候補責任変異を用い、他品種(日本短角種、ホルスタイン等)を含む複数の集団に対する関連解析を実施する。この確認により、候補変異が責任変異かどうかを高い確度で確認することができる。加えて、責任遺伝子・変異の遺伝分散の推定(どの程度遺伝的効果を持つか)と普遍性(責任変異であれば品種を問わず効果の普遍性が確認できる)を評価する。他品種集団はそれぞれ約200-300頭の集団を準備している。 これらの結果により同定された責任変異に対しては、変異に伴う責任タンパク質の立体構造解析、あるいは調節領域の変異に対するプロモーター解析を実施する予定である。
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