研究課題
平成29年度までに選抜された2つの受容体候補遺伝子のLRP2LとFcRYとがIgY抗体との結合活性を有するのかを調査した。(1) 第1の候補遺伝子であるLRP2LとIgYとの結合能を調査するために、シグナル配列と膜結合領域より下流を除いた分泌型のLRP2L(翻訳開始点から31-2,120アミノ酸残基)を哺乳類細胞を用いて作出した。作出した分泌型LRP2Lの分子サイズを確認した所、内因性で発現するLRP2Lとほぼ同一の分子サイズ(約300 kDa)であった。分泌型LRP2LとIgY抗体が結合するのかを、様々な手法を用いて解析したが、両者は結合しないことが判明した。(2) 第2の候補遺伝子であるFcRYとIgYとの結合能を調査するために、シグナル配列と膜結合領域より下流を除いた分泌型のFcRY(翻訳開始点から36-1,396アミノ酸残基)を哺乳類細胞を用いて作出した。作出した分泌型FcRYの分子サイズは、内因性で発現するFcRYとほぼ同一の分子サイズ(約180 kDa)であった。分泌型FcRYとIgY抗体が結合するのかをプルダウン法で調査した所、両者は酸性条件(pH 6.0)で強く結合し、中性条件下(pH 7.4)では解離することが判明した。(3) 卵黄輸送能の異なる3種類のIgY-Fc変異体 (G365A、WT、Y363A) と分泌型FcRYとの結合能を測定した。その結果、FcRYへの結合能はY363Aが最も低いこと、またG365AとWTの結合能は同等かあるいはG365Aの方が高いことが明らかとなった。この結果は、血中に投与したIgY-Fc変異体の母ドリ卵黄への輸送量がG365A>WT>Y363Aであったこととほぼ一致した。以上より、IgYの血液から卵黄への輸送には第2の候補遺伝子であるFcRYが関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、精製した候補遺伝子タンパク質の結合活性評価の過程で、精製した候補タンパク質の精製度が低いことが判明した。そのため、平成30年度の経費を令和元年度に繰り越して本研究課題を実施した。その結果、精製度の高い候補遺伝子タンパク質を得ることができ、平成30年度当初の実施計画をほぼ達成することができた。2つの候補遺伝子タンパク質のうちの一つがIgYと酸性条件下で結合することを示すことができ、候補遺伝子を一つに絞り込むことができた。よって、本研究課題はおおむね順調に進展している。
これまでの研究により、卵黄輸送を担うIgY受容体の候補遺伝子がほぼ一つに絞ることができた。今後は、この候補遺伝子の機能特性と生理学的特性を調査するために、体組織における詳細な発現部位を解析するとともに、この候補遺伝子を細胞株に強制発現させた時のIgYの輸送能を調査することで、この候補遺伝子が卵黄へのIgY輸送を担う真の受容体であるかを証明する。
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Poult. Sci.
巻: 97 ページ: 3577-3586
doi.org/10.3382/ps/pey202