卵黄輸送を担うIgY受容体の候補遺伝子がほぼFcRYに絞られた。この候補遺伝子の機能特性を調査するために、体組織における詳細な発現部位を解析した。さらに、この候補遺伝子を細胞株に強制発現させた時のIgYの輸送能を調査した。 (1) 免疫染色法によって、FcRYの卵胞や各組織におけるタンパク質レベルでの発現局在を解析した。FcRYを認識する特異抗体を用いて、産卵ニワトリの卵胞、各種組織ならびに胚発生期の卵黄嚢膜における発現部位を調査した。 (2) 卵胞では卵胞膜内層の基底膜付近でFcRYタンパク質が局在していた。卵胞膜内層の基底膜付近では毛細血管が分布することから、FcRYが毛細血管の内皮で発現する可能性が示唆された。また、肝臓や脾臓の類洞内皮細胞や、脾臓、胸腺、空腸のリンパ球にもFcRYが発現することが明らかとなった。類洞内皮細胞やリンパ球で発現するFcRYは血中IgY濃度の恒常性維持に関わることが推察された。 (3) FcRYのIgY受容体機能をより明確にするために、上皮系細胞株のMDCK細胞にFcRYを強制発現させて、細胞レベルでIgY-Fc変異体とFcRYとの相互作用を検証した。FcRY発現細胞株を作製するためにリポフェクション法でFcRY発現ベクターをMDCK細胞に遺伝子導入した。その結果、恒久的にFcRYを発現する細胞株を樹立することに成功した。しかしながら、この細胞株でのFcRYの発現レベルは内因性FcRYのものよりも著しく低く、遺伝子導入法の改善が必要であると考えられた。 本研究により、鳥類の母子免疫では卵胞膜内層に発現するFcRYが血中IgYの卵黄への輸送に関与する可能性が示唆された。今後、さらなるFcRY発現の詳細な組織学的な解析や培養細胞を用いたFcRYの機能試験により、卵胞に発現するFcRYが実際にIgY輸送を担っているかどうかを検証する必要があろう。
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