研究課題/領域番号 |
16H05022
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 享史 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (90261338)
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研究分担者 |
青島 圭佑 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (90745069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヘルペスウイルス / ウマ / レセプター / 潜伏感染 |
研究実績の概要 |
ウマヘルペスウイルス1型 (EHV-1) レセプターであるウマMHCクラスI分子を発現するマウスモデルを使用し、EHV-1潜伏感染の分子機構を明らかにする目的で、平成29年度は以下の実験を行った。 EHV-1潜伏感染を再現する神経細胞モデルとして平成28年度に作製した PC12-A68細胞(ウマMHCクラスI重鎖遺伝子クローンA68を安定発現させたラットの副腎褐色細胞腫由来細胞株)を神経成長因子下で7日間培養することにより、神経細胞様に分化させた。この細胞にEHV-1を感染させ、アシクロビル存在下で培養することにより、持続感染を成立させた。ヒト単純ヘルペスウイルスではデキサメサゾン(DEX)がウイルス前初期遺伝子プロモーターに作用し、ウイルス再活性化を誘導することが知られている。そこでEHV-1持続感染細胞をDEX存在下で7日間培養し、培養上清中の感染性ウイルス粒子の有無および細胞内ウイルス遺伝子転写産物の検出を試みた。その結果、DEX添加群・非添加群ともに培養上清中に感染性ウイルスは認められなかったが、DEX添加群において33.3%、DEX非添加群において3.33%の割合でウイルスICP0遺伝子転写産物が検出され、両者には有意差が認められた。以上の結果より、DEXにより誘導されたウイルス遺伝子発現誘導は、ウイルス再活性化を模倣している可能性が示唆された。 EHV-1感受性マウスT細胞モデルとして作製したCTLL2-A68細胞(A68を安定発現させたマウスの細胞傷害性T細胞由来細胞株)は細胞増殖が活発なためウイルス持続感染の成立が困難であったが、TGF-β処理によって生細胞数を維持しながら細胞増殖の遅延を誘導することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoモデルとして当初用いたLck/A68-B2Mマウスは目的とする表現型の産仔を一定数得ることが難しいため、CTLL2-A68細胞の受身移入による潜伏感染モデルの解析を検討している。in vitroモデルについては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
PC12-A68細胞において潜伏感染からのウイルス再活性化を示唆するデータが得られたが、より効率よくウイルス再活性化が誘導される実験系を作製、使用する目的で、現在、複数のマウス、ラット由来神経系細胞株にA68遺伝子を導入し、検討を行っている。これらのEHV-1感受性神経系細胞株においてEHV-1潜伏感染時に特異的に発現するウイルス遺伝子産物の検出を行う。in vivoモデルとしてはCTLL2-A68細胞の受身移入による潜伏感染モデル系を使用し、ウイルス再活性化を効率よく誘導する実験条件を検討する。
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