研究課題
ウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)レセプターであるウマMHCクラスI分子を発現する小動物モデルと細胞モデルを使用し、EHV-1潜伏感染の分子機構を明らかにする目的で、2019年度は以下の実験を行った。EHV-1は神経細胞に潜伏感染することが示唆されているが、神経細胞におけるウイルス増殖の抑制機構については不明な点が多い。2018年度に作製したRN33B-A68B2M細胞(ウマMHCクラスI重鎖遺伝子クローンを安定発現させたラット中脳縫線核神経細胞株)は温度感受性に神経細胞への分化を示すEHV-1感受性細胞であり、未分化RN33B-A68B2M細胞、分化RN33B-A6B2M8細胞にそれぞれEHV-1を感染させた場合、前者においてはウイルスの増殖感染が生じるのに対し、後者ではウイルスの増殖が認められない。神経細胞におけるEHV-1の増殖抑制とそれに続く持続感染のメカニズムを明らかにする目的で、未分化状態、分化状態のRN33B-A68B2M細胞にEHV-1を感染させ、感染後1時間目、12時間目におけるI型インターフェロン応答を比較した。その結果、分化細胞では未分化細胞に比べてより高レベルのIFN-α遺伝子発現が認められたものの、両細胞間でSTAT-1リン酸化およびインターフェロン誘導遺伝子発現に差は認められなかった。また、感染後12時間目に分化細胞、未分化細胞より抽出したtotal RNAをsmall RNA-seqにより解析した。その結果、分化細胞では感染に伴ってORF42遺伝子に相同性を有するマイクロRNAの発現が上昇したのに対し、未分化細胞では同マイクロRNAの発現は認められなかった。以上の結果より、EHV-1感染神経細胞においてウイルス遺伝子に相同性を有するマイクロRNAが特異的に発現し、これがウイルス増殖の抑制に関与する可能性が示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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