研究課題
トリパノソーマはヘムの生合成経路を欠損し,生存に必要なヘムは宿主からの取込みに依存している。そのためヘム源を取込むタンパク質はトリパノソーマ制御法の標的として有効であると考えられる。本研究課題でトリパノソーマの媒介節足動物体内ステージ原虫(EMF)で発現・機能する遊離型ヘモグロビンレセプター(TcEpHbR)を同定し,海外学術雑誌にて報告した(Yamasaki et al., Parasites & Vectors, 2016)。TcEpHbRの伝播阻止ワクチン標的としての可能性を検討するため,TcEpHbRに対するモノクローナル抗体(mAb)を作製し,EMFに対する増殖阻害効果の解析及びmAbの性状解析を行った。TcEpHbRに対するmAbを作製し,EMFに対する反応性を間接蛍光抗体法(IFA)で確認した。またELISAでmAbのエピトープ探索を試みた。さらにmAb添加培養実験により,EMFに対する増殖阻害効果及びヘモグロビン(Hb)取込み阻害効果を解析した。IFAの結果,EMFに対して反応性のあるmAbが1クローン(mAb-1)得られた。ELISAの結果,mAb-1は150アミノ酸残基(AA)以下の組換えTcEpHbRには反応しなかったが,200AAから完全長の組換えTcEpHbRには反応した。またmAb-1処置はEMFの細胞膨張を特徴とする細胞変性と増殖阻害効果を引き起こしたが、EMFのHb取込みは阻害しなかった。ELISAの結果,mAb-1は立体構造認識抗体であることが明らかとなり、エピトープはTcEpHbRのN末端から50から200AAの領域に存在することが示唆された。また,mAb-1はEMFのHb取込みを阻害しなかったが,顕著なEMF増殖阻害効果を示した。このことからTcEpHbRはHbの取込みに加えて細胞増殖に関わる未知の機能を有する可能性が考えられた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Parasites & Vectors
巻: 9 ページ: 299
10.1186/s13071-016-1563-9