研究課題/領域番号 |
16H05027
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
猪島 康雄 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (20355184)
|
研究分担者 |
村上 智亮 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10728447)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | アミロイド / SAA / 上皮 |
研究実績の概要 |
本年度は、腸管上皮におけるSAA1とSAA3の機能の違いを明らかにするため、マウスSAA1とSAA3を大腸菌で発現、精製した組換えタンパクを作製した。さらにSAA1とSAA3の前半と後半のアミノ酸配列を入れ替えたキメラ組換えタンパクSAA1/3、およびSAA3/1を同様に作製した。これらのタンパクをマウス腸管上皮由来株化細胞CMT-93に添加し、粘膜免疫関連サイトカイン等の遺伝子の発現をリアルタイムPCRにより定量した。その結果、組換えタンパクのCMT-93細胞に対する生物活性は、同じタンパク量を添加してもタンパクのロットによって大きく異なり、細胞への反応性が大きくばらつくことが明らかとなった。再現性のある実験結果を得るために、細胞に添加する前に活性の程度を事前に調整する必要があることが明らかとなった。SAA3の添加により、CMT-93細胞では腸管粘液の主成分であるムチン2(MUC2)mRNAの発現が有意に上昇することが明らかとなった。 また、生体内でのアミロイド形成と異種動物への伝達について明らかにするため、ウシ、およびマウス由来のアミロイドをマウスに接種し長期間観察し、解析した。生体内で沈着したアミロイドは時間とともに検出限界以下まで消失するが、再度アミロイド接種、あるいは炎症刺激を与えると、初回よりもアミロイド沈着量が多くなり、異種動物由来のアミロイドでも伝達することが明らかとなった。 さらに、マウス以外の腸管でのSAA1とSAA3の発現について明らかにするため、ウシから摘出した腸管を用いてSAA1、およびSAA3の発現を免疫組織化学により比較解析した。ウシの腸管上皮では、SAA1の発現は確認できず、SAA3が発現していることが明らかとなった。これらのことからSAA3は腸管上皮において自然免疫に関与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大腸菌で発現させた組換えタンパクのCMT-93細胞に対する生物活性は、発現させたロットによって大きく異なり、細胞への反応性が大きくばらつくことが明らかとなった。再現性のある実験結果を得るために、発現タンパクごとに生物活性を統一させるための予備実験が新たに必要となったため、当初予定していなかった実験時間が必要となった。 しかし、それ以外は計画通りおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
作製に成功したキメラ組換えタンパクSAA1/3、およびSAA3/1を用いて、CMT-93細胞に添加し、免疫関連サイトカイン等のmRNA発現解析を行うことで、SAA3の生物活性に重要な機能領域を同定する。また、SAAにより誘導される免疫関連サイトカイン等を同定する。
|