研究課題
これまでに得られた研究成果である「血清アミロイドA3(SAA3)は上皮細胞において、SAA1とは異なり、細菌感染に対する生体防御に関与する」という生物活性が、腸管以外の上皮細胞でも同様である可能性を明らかにするため、さらなる解析を進めた。腸管以外の上皮として、細菌感染による肺炎、乳房炎を想定し、マウスから摘出した肺、および乳腺上皮培養細胞を用いたex vivo、in vitro解析を実施した。さらに、と畜場でと殺、解体された健康牛の各種組織を用いて、ウシ正常上皮でも検討した。マウス摘出肺へのLPS、LTA注入では、LTAよりLPS処理に鋭敏に反応し、SAA3 mRNA発現が上昇した。免疫染色(IHC)によりSAA3タンパク質は管腔側に発現していた。SAA1に有意な発現は認められなかった。乳腺上皮由来NMuMG細胞へのLPS、LTA添加では、添加2時間後に、SAA3 mRNA発現量が有意に増加した。しかし、SAA1 mRNA発現量に有意な変化は認められなかった。また、SAA3 mRNA発現量の増加は、LTAよりもLPS刺激のほうが顕著だった。LPS添加8時間後と12時間後、およびLTA添加12時間後に、SAA3タンパク質の発現量増加が間接蛍光抗体法(IFA)により認められた。IFAによるSAA1およびSAA3タンパク質発現量の経時的変化の結果は、ウェスタンブロット法による結果でも一致して確認できた。ウシSAA3に対する抗体を新規に作出して実施したIHCにより、健康牛の小腸、乳腺、肺、子宮内膜上皮においても、SAA3発現が確認された。これらの結果から、マウスSAA3は、腸管上皮と同様に、肺、乳腺においても細菌感染、特にグラム陰性菌に対する生体防御機能に関与していることが示唆された。また、ウシSAA3も上皮における細菌感染防御に関与していることが示唆された。
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