研究課題
本年度ではブドウ球菌スーパー抗原毒素SEAを用い、鶏由来マクロファージに対する影響および空胞形成機序の解析を行った。また、SEsの鶏に対する病原性と病態形成への関与についてin vivoで検討した。まずは、SEsおよび嘔吐活性またはスーパー抗原活性を欠損したSEAの変異体毒素を、それぞれ鶏由来マクロファージ細胞株HD11細胞に添加し、培養24時間後にいずれの毒素も細胞内に空胞が形成された。SEsの空胞形成は嘔吐活性およびスーパー抗原活性とは異なる新規な生物活性であることが示唆された。細胞空胞形成機序を解明するため、免疫蛍光染色によってSEAの細胞内での動態および局在を観察した。SEAは添加後直ちに細胞内に取り込まれ、初期エンドソームから小胞体へと移行することが明らかとなった。さらに、SEAが鶏のブドウ球菌感染症における病態形成に関与するか検討した。SEAの鶏の皮下または皮内接種により、皮膚組織の炎症を誘導し、偽好酸球の浸潤およびサイトカイン発現が上昇することが明らかとなった。SEsは鶏の黄色ブドウ球菌感染症における病態形成へ関与することが示唆された。これらの結果から、SEsは鶏培養細胞株に取り込まれた後、エンドソームから小胞体へ移行し空胞を形成する。また、in vivoにおいてSEAは鶏の皮膚炎症を惹起することが示された。今後、さらにSEsの細胞空胞化作用と感染症における病態形成との関連性を解明することにより、鶏ブドウ球菌感染症の防御に新たな知見が期待される。
2: おおむね順調に進展している
ブドウ球菌スーパー抗原毒素の新たの生物活性を見出し,さらに野生型と変異型毒素を用いて確認できた。また,当該生物活性についての解析も進んでおり解明しつつある。
今後,HD11細胞とSEAとの結合タンパク質を詳細に検索するため、Far Western blottingおよび質量分析を行い、宿主細胞と毒素と結合するレセプター分子を解析し,同定する予定。
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