研究課題
黄色ブドウ球菌が産生するブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)はスーパー抗原活性および嘔吐誘導活性を有する毒素として広く知られている。我々はこれまでの研究においてSEsが鶏マクロファージ由来細胞株に対して増殖活性を有することを見出した。本年度では、SEAを用いて、細胞のSEAと結合する分子、細胞内でのSEAの動態および関連分子の変化と局在について検討した。まずはSEAを添加した鶏マクロファージ由来細胞株HD11細胞の増殖能およびSEAとの結合性を検証した。次に、質量分析によりSEAと結合するタンパク質を検索・同定した。また、HD11細胞内におけるSEAと結合タンパク質の動態を経時的に観察した。SEAは鶏マクロファージ由来細胞株HD11細胞に対し顕著な細胞増殖活性を有することが明らかとなった。質量分析によりSEAと結合するタンパク質はピルビン酸キナーゼ(PK)である可能性を示し、また、SEA添加細胞では時間の経過とともに細胞質内のPKは有意に細胞核内へと移行することが観察された。これらの結果から、SEAはPKと結合し、PKの核内移行を誘起することで、細胞増殖を引き起こすと考えられる。さらに、SEs病原性についてin vivoで解析した。鶏にSEA接種後、偽好酸球およびリンパ球が多量に真皮、皮下組織に浸潤していることが観察された。また、SEA接種後12および24時間において好酸球と好塩基球が出現し、接種後48時間で形質細胞が出現した。SEA接種によりメタクロマジー陽性細胞数が有意に減少し、肥満細胞脱顆粒の誘起が示唆された。さらに、SEA接種皮膚片において炎症性サイトカイン(TNF-α, IFN-γ, IL-6)とケモカイン(CXCLi2)の発現量が有意に上昇した。これらの結果から、SEAは鶏皮膚組織に炎症反応およびアレルギー様反応を惹起することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
概ね予定計画の通りに進んでおり,また、予想外の新たな生物活性も観察・検証された。
今後,確認・検証された新たな生物活性について,詳細を調べると同時に,この生物活性が病原性との関連性及びその分子病原機構について解析し、ワクチンへの応用可能性を検討する。
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Toxins (Basel)
巻: 11 ページ: 141
10.3390/toxins11030141
巻: 10 ページ: 485
10.3390/toxins10110458