研究実績の概要 |
急性期脊髄損傷においては、他家BM-PACの静脈内投与を想定し、非免疫不全動物の脊髄損傷モデルを用いて研究を行った。自家細胞の投与と比較し、損傷部へのHomingを認めたものの、治療効果が低下したことから、他家移植においては免疫細胞との相互作用をより詳細に検討する必要があると考えられた。 亜急性脊髄損傷においては、自己BM-PACの静脈内投与による脊髄再生医療の臨床応用を想定し、これまで治療効果と安全性を確認してきたが、治癒機転について明らかにした。具体的には、BM-PACsは損傷部において血管内皮成長因子(VEGF)を中心とした血管新生因子を分泌することで、新生血管数を有意に増加させ、組織損傷抑制、再生促進に寄与していると考えられた。現在、これらの結果をもとに、臨床応用へ展開するための準備を行っている。 また、最終年度は慢性期脊髄損傷に対する細胞補充療法の材料としてBM-PACsが有用であるかを、神経細胞分化能の観点から検討した。その結果、BM-PACsは塩基性線維芽細胞成長因子(FGF-2)の刺激により未分化性の維持・促進を来たし、神経分化を含む多分化能が促進することを明らかにした。FGF-2暴露後のBM-PACsを神経細胞誘導することにより、MAP2発現が上昇し、Ca取り込みにより興奮する電気生理学的機能を有する細胞を作製することが可能であり、神経細胞分化能を有すると考えられた。今後、脊髄損傷により喪失する運動神経など、より特異的な機能的神経細胞への分化を試み、慢性期脊髄損傷の治療開発へ役立てたいと考えている。 また、最終年度では、脊髄損傷と並行して行っているBM-PACsからの軟骨組織誘導において、良好な結果が得られ、国際誌で報告した(Endo K, Fujita N, Nakagawa T, Nishimura R. Effect of fibroblast growth factor-2 and serum on canine mesenchymal stem cell chondrogenesis. Tissue Eng Part A. 2018)。
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