研究課題/領域番号 |
16H05038
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
大澤 健司 宮崎大学, 農学部, 教授 (90302059)
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研究分担者 |
保田 昌宏 宮崎大学, 農学部, 教授 (10336290)
北原 豪 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90523415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 牛 / 子宮内膜炎 / 診断 |
研究実績の概要 |
牛子宮内膜炎の治療・予防ストラテジー確立の基礎となる診断マーカーを探索することを目的として、白血球由来酵素および血液生化学検査項目の動態ならびに細菌感染と子宮内膜炎との関連を調べた。ホルスタイン種経産牛43頭を供試、分娩後3、5、7週に腟検査、直腸検査、超音波検査を実施した後、サイトブラシによる子宮内膜上皮のスメアサンプルを採取、子宮内膜上皮細胞中に占める多形核好中球 (PMN) の割合 (PMN%) を算出した。また、血漿サンプルを採取、アルブミン (Alb)、血中尿素窒素 (BUN)、非エステル型遊離脂肪酸 (NEFA)、βヒドロキシ酪酸 (BHBA) および総コレステロール (T-Cho) について生化学検査を実施した。さらに、サイトブラシサンプルのエステラーゼ (LE) およびミエロペルオキシダーゼ (MPO) 活性を測定すると共に子宮内膜スワブを取り、細菌培養とMALDI-TOF質量分析計による菌種同定を行った。なお、分離細菌のうち、Trueperella pyogenesおよびEscherichia coliを子宮内膜に対する病原性細菌とした。 その結果、分娩後3週のAlbとPMN%との間に弱い負の相関 (P = 0.07) が、分娩後3週と7週のBUNとPMN%との間に弱い負の相関 (3週: P = 0.07, 7週:P = 0.08) が認められた。LE活性は分娩後3、5、7週のいずれにおいてもPMN%との間に正の相関 (P < 0.01) が認められた。一方、MPO値とPMN%との間には関連が認められなかった。また、分娩後5週では潜在性子宮内膜炎罹患牛における病原性細菌検出率が健康牛と比較して高かった (P < 0.05)。 以上より、子宮内膜炎の診断における診断マーカーとして子宮内膜サンプル中のLE活性と病原性細菌種が候補となることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究成果の他、エストラジオール-17β投与による子宮血流量の変化をモニターし、今後の子宮内膜炎の治療プロトコールを確立する上で有用な結果を得ることができた。上記成果と合わせて計2本の原著論文を国際誌に公表した。 また、当初研究計画の一つである、黒毛和種経産牛における授乳期間の違いによる子宮内環境動態の相違を観察した。すなわち、分娩後90日で離乳させる自然授乳群と、分娩後10日で離乳させる早期離乳群の2群に分け、両群間におけるエネルギーバランスが同等になるように給餌量を調整した。同一個体の分娩後2週(W 2)から6週(W 6)まで週1回、サイトブラシを用いて子宮内膜スメアを採取、PMN%をモニターした。同時に子宮内膜スメアの細菌培養を行った。また、子宮の物理的修復を調査するため、超音波検査により子宮角面積を測定した。本試験の中間結果について学会発表を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
分娩後早期において子宮内膜炎と診断された個体に対してポビドンヨード液を子宮内に投与し、投与前後における子宮内環境(PMN%,炎症性サイトカイン発現、分離細菌等)の変化を観察すると共に、その後の繁殖成績を追跡することで治療法としての有効性を評価する。すなわち、分娩後5週目の乳牛を供試し、子宮内2%PVP50mL投与群、生理食塩液50mL投与群、および無投与群の3群に無作為に分ける。超音波診断装置を用いて卵巣所見を観察する。7日後よりCIDR-synch法による排卵同期化処置を開始、処置後10日目に定時人工授精を実施する。各群の投与直前(D0)から7日目(D7)まで8日間および定時授精直前のD17にサイトブラシを用いて子宮内膜スメアを連日採取し、PMN%を算出する。
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