研究課題
牛の子宮内膜炎は最終分娩時から分娩後早期の異常も原因の一つである。異常分娩の一つに子宮頸管熟化の異常があげられるが知見は少ない。また、悪露の排出がみられる分娩後2週までにおける細菌感染と生理的な炎症反応については不明な点が多い。そこで本研究では牛の妊娠後期から末期における頸管粘液中の好中球の動態を明らかにすること(試験1)、および悪露中の炎症性サイトカイン発現量とその後の子宮内膜炎罹患との関係を明らかにすること(試験2)を目的とした。試験1:経産牛12頭を供試、妊娠200から260日まで月に一回、以後分娩するまで1週間隔で頸管粘液を用手にて採取、有核細胞中の多形核好中球の割合(PMN%)を算出した。その結果、頸管粘液中PMN%は分娩11~15週前 (3.7 ± 12.9) と比較して分娩2週前(37.9 ± 28.0)および1週前(44.5 ± 19.4)では高値(P < 0.05)を示した。試験2:臨床上健康なホルスタイン種経産牛計57頭を供試、分娩後2、5、9および16日に悪露を用手にて採取、さらに分娩後5週に子宮内膜表層を採取、悪露と子宮内膜中サイトカインmRNA発現量を測定した。分娩後5週に子宮内膜PMN%が6以上の個体を子宮内膜炎と診断した。その結果、子宮内膜炎罹患牛(n = 14)は非罹患牛(n = 43)と比較してIL-1α、IL-1β、IL-8の発現量が分娩後5日で低く(P < 0.05)、分娩後5週で高かった(P < 0.05)。以上より、牛の子宮頸管粘液中PMN%は分娩に近づくにつれて上昇することが示唆された。また、分娩後早期における悪露中サイトカイン発現量の動態はその後の子宮内膜炎罹患リスクを予測する指標となることが示唆された。牛の難産予測への応用を図り、分娩後の子宮内膜炎の予防策を講じるためにも、今後は牛の子宮頸管熟化機構の詳細を解明する必要がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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