研究課題
ある種の病態では骨格筋や心筋に線維化や脂肪化がみられる。これらは間葉系前駆細胞を共通の起源にもつ線維芽細胞の増加や脂肪細胞の出現によるものである。申請者は間葉系前駆細胞特異的マーカーとしてCSPG4 分子を同定し、この分子が間葉系前駆細胞自身の分化制御に関与するだけでなく筋細胞に対しても作用している可能性を見いだした。本研究は間葉系前駆細胞ならびにそれを共通の起源にもつ線維芽細胞や脂肪細胞を筋細胞周囲の環境(ニッチ)形成因子と位置づけ、その分化制御機構におけるCSPG4 の役割や筋細胞に対するCSPG4 の作用について解明するとともに、ゲノム編集技術を用いて生体筋組織におけるCSPG4 分子の機能を検証することを目的としたものである。研究開始初年度は、一部で動物飼育施設の問題により遺伝子改変ラットの作出に遅れが生じるなどの想定外の事態はあったものの、研究実績は以下の通りである。1.CRISPR/Cas法を用いたCSPG4欠損ラットの作出を行い、CSPG4遺伝子にout-of-frame変異を有する3系統のラットが得られた。2.ラット間葉系前駆細胞クローンである2G11細胞においてCRISPR/Cas法を用いてCSPG4遺伝子の変異を導入し、複数のCSPG4欠損クローンを得ることができた。3.CSPG4分子の各ドメイン(細胞外ドメイン、細胞内ドメイン、リン酸化部位)を欠く発現ベクターの構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
CSPG4遺伝子改変ラットの作出に若干の遅れは生じたものの、研究計画通りにその作出は完了した。また、当初は多少の困難が予想された、2G11細胞のCSPG4欠損クローンについても、導入するプラスミドベクターにCas9とともにmCherry遺伝子を共発現させることでcell sortingを利用した効率的な単離を行うことが出来た。
今後も研究計画通りに進める予定である。
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Exp Cell Res
巻: 347 ページ: 367-377
10.1016/j.yexcr.2016.08.023.