研究課題
ほ乳動物の受精卵は胚性ゲノムの活性化を経て、全能性を持つ細胞となり、その後の細胞分化と着床を経て個体形成に至る。本研究では、この過程における遺伝子発現を制御するクロマチンのヒストン修飾に注目し、受精後のクロマチンの再構築による胚性ゲノムの活性化から着床に至るまでの過程でどのような分子機構が働いているかを明らかにすることを目的とした。Pwp1は胚性ゲノムの活性化時に発現が急上昇し、Stat3の上流の遺伝子発現の抑制的修飾であるH4K20me3を認識する因子(PWP1)をコードする遺伝子であり、細胞の分化能にとって必須であることが報告されている。初期胚においてPwp1を抑制すると、4細胞期以降の発生率が徐々に低下し、桑実期で発生が停止することが明らかになった。このことからStat1を介した細胞の分化が初期発生にとって重要であることが示唆された。また、Pwp1抑制胚においては、ゲノム構造の安定化に必要だと考えられているレトロトランスポゾン一つであるLINE1の発現が桑実胚期で上昇していることも明らかになっており、ゲノムの安定化と細胞分化の関連についても今後の検討課題である。また、遺伝子発現を活性化させるH4K20me1修飾に関わるSETD8を1細胞期胚で阻害すると、発生が2細胞期で停止した。20番目のリジン残基の重要性を確認する目的で、ヒストンH4の20番目のリジン残基をメチオニンに置換した変異体(H4K20M)をコードしたmRNAを1細胞期に顕微注入し、過剰発現させた結果、2細胞期で発生を停止した。以上の結果ら、H4K20me1による遺伝子発現制御機構が初期胚の発生にとって重要な機能を持つことが示された。また、SETD8は体細胞ではDNA損傷応答に関わることが報告されていることから、初期胚においても培養中に生じるDNA損傷を修復することで発生に不可欠な機能を持つことが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
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