研究課題/領域番号 |
16H05043
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 教授 (90315359)
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研究分担者 |
小林 郁雄 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20576293)
北原 豪 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90523415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グレリン / ニューロメジンU / ニューロメジンS / 自律神経 / 肥満 / 体温 / プロラクチン |
研究実績の概要 |
昨年に掲げた「今後の研究の方策」に従って、ニューロメジンU(NMU)の前駆体に存在するもう一つのペプチドNU1のプロラクチン(PRL)分泌促進のメカニズムと、今回新たに発見したNMUのPRL分泌抑制効果について検討した。尚、NU1は正式名称としてNURP(Neuromedin precursor related peptide)と名付けて2017年に報告したので、今後、NU1はNURPと称する。NURPの側脳室投与でのPRL分泌促進作用は、ドーパミンアゴニストを前処置しても変化しなかったので、ドーパミンを抑制してPRLを促進していると推測された。一方で、NMUの側脳室投与は生理的な高PRL状態(偽妊娠期あるいは哺乳期、拘束ストレス)あるいはドーパミンアンタゴニストを与えた時の高PRL状態のすべてを低下させた。培養下垂体細胞でのPRLの分泌には影響しなかった。また、NMUはPRLの他にGHの弱い減少を起こしたが、LH, FSH, TSHには影響しなかった。NMU/NMS-KOマウスはドーパミンアンタゴニストに対してwildマウスよりも高いPRLレベルを示した。以上の結果、NMUの側脳室投与は雌雄ラットの生理的あるいは人為的な血中PRLの上昇を完全に抑制する事が判明した。特にドーパミンアンタゴニスト投与により上昇を抑制した事から、NMUがドーパミンの放出を刺激してPRLを抑制している可能性が示唆された。そこで、NURPあるいはNMUを側脳室投与し、弓状核(下垂体PRL分泌を抑制するドーパミンニューロンが存在している)あるいは黒質(脳全体的なドーパミン系を支配するドーパミンニューロンが存在している)のドーパミンニューロンに対するcFos発現を調べた。その結果、NURPではcFosはすべてで確認できなかったが、NMUは弓状核のみのドーパミンニューロンにcFosを発現させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
NURPのプロラクチン分泌促進作用は国立循環器病センターとの共同研究と言う形でScientific Reportsに掲載された。また、NURPの中枢における生理作用が判明し、Biochemical and Biophysical Research Communications に掲載された。さらに学会においても報告された。
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今後の研究の推進方策 |
申請時にはNMUとNMSの交感神経様作用機序の解明のみを計画していたが、NMUとNMSの前駆体中に新たなペプチドNURPとNSRPが発見されたことから、NMUとNMSに加えてNURPやNSRPについても神経作用の解明を目指すこととしたい。そのため、2018年度は、(1)これらの4つのペプチドが中枢のどの部位に作用し、どのように作用するのかを重点的に解明する。つまり、NMU, NMS, NURPあるいはNSRPの中枢投与により現れる自律神経様作用の比較と、その中枢作用部位やその作用様式(興奮あるいは抑制)を比較する。その方法として、側脳室投与後の体温、呼吸商、心拍数あるいは摂食、行動量などを計測して自律神経様作用を比較する。また、凍結切片と免疫染色により、それぞれのペプチドの側脳室投与後のcFos発現部位の比較を行う。(2)交感神経遮断薬や副交感神経遮断薬によって、それぞれのペプチドによる自律神経様作用は阻止されるのか否かを検討する。以前のグレリンの実験と同様に、ムスカリン受容体遮断薬のメチルスコポラミン、あるいは非選択的β受容体遮断薬のチモロールの前投与を行い、その後4つのペプチドの側脳室投与を行う。すなわち、副交感神経や交感神経の作用を遮断した場合、NMU, NMS, NURPあるいはNSRPの中枢投与により現れる自律神経様作用が遮断されるのか否かを検討する。(3)2017年にNURPとNMUのプロラクチンの相反的作用が判明したことから、NSRPとNMSの側脳室投与についても下垂体前葉ホルモン分泌への影響を調べる。さらに、NMU, NMS, NURPあるいはNSRPのバゾプレッシンやオキシトシン分泌に対する効果を比較検討する。
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