研究課題/領域番号 |
16H05043
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 教授 (90315359)
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研究分担者 |
小林 郁雄 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20576293)
北原 豪 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90523415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グレリン / ニューロメジンU / ニューロメジンS / 自律神経 / 肥満 / 体温 / プロラクチン |
研究実績の概要 |
昨年の報告書の「今後の研究の方策」に「NMU, NMS, NURPあるいはNSRPの4つのペプチドが中枢のどの部位に作用し、どのように作用するのかを重点的に解明する」ことを掲げた。そこで、2018年度はその点を重点的に検討した。NURPとNMUについては、すでに体温、呼吸商、心拍数あるいは摂食、行動量などへの影響を計測していたので、今回はNSRPとNMSを対象にした。合成したNSRPと市販のNMSを用いて、ラットの脳室内に投与し、主に反射機能や自律神経系への影響を比較検討した。 その結果、ホットプレートでの温熱反射実験では、NSRP、NMSの側脳室投与は反射速度を有意に亢進させ、両者に差は無かった。赤外線スコープ用いた体表体温への影響では、NMS投与群で、投与直後から著しく体温の上昇が見られ約60分間持続したのに対して、NSRP投与群では投与30分後からの緩やかな上昇に留まった、その上昇はNMS投与群よりも小さいものであった。摂食量への影響では、NMSは投与後12時間まで摂食を抑制したのに対し、NSRPには抑制効果が見られなかった。赤外線センサーを用いた一般行動量への影響では、顕著な差が現れた。すなわち、NMS投与群は投与15分後に著しい増加を示した(生理食塩水投与群の2.5倍以上の行動量を示した)が、NSRPの投与群は、生理食塩水投与群と全く差が無かった。次に、エネルギー代謝への影響に関しては、NMS、NSRPの投与で、どちらもカロリー消費量の増加を示したが、酸素消費量はややNMS投与群の方が高かった。また、夜間の尿量への影響に対して、NSP投与は排尿量を著しく増加させたのに比べ、NSRPは全く影響を及ぼさなかった。以上の結果、NSRPとNMSは同じ前駆体から切り出されるが、その作用は明らかに異なることが示され、両者が役割を分担している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
NMSの前駆体中にNMSとは異なるもう一つのペプチドが存在することを以前報告したが、未だ命名されておらず、今回、これをNSRPと名付け、その生理機能の一端を世界で初めて明らかにした。特に興味深い点は、NMSとNSRPが同じ前駆体に存在しながら、その作用を比較すると、様々な点において異なる事が示されたことにある。このことはNSRPが少なくともNMSの受容体とは別の受容体に作用している可能性を示しており、この成果を公表すれば、その受容体の探索研究が開始されると期待される。さらにこの研究を継続する事で、創薬研究への橋渡しが可能になるかも知れない。
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今後の研究の推進方策 |
申請時にはNMUとNMSの交感神経様作用機序の解明のみを計画していたが、NMUとNMSの前駆体中に新たなペプチドNURPとNSRPが発見されたことから、昨年から、NMUとNMSに加えてNURPやNSRPについても神経作用の解明を目指すこととした。すでにNMSとNMUおよびNURPに関する自律神経様作用についてはほとんど解明し終わった。2018年度は残りのNSRPの自律神経様の作用を検討した。そこで、2019年度は、(1)凍結切片と免疫染色により、それぞれのペプチドの側脳室投与後のcFos発現部位を比較検討する。これについてはすでに2018年度後半から開始しており、一部の結果は得ているが、まだ十分では無い。(2)NSRPの自律神経様の作用が、交感神経遮断薬や副交感神経遮断薬によって、阻止されるのか否かを検討する。ムスカリン受容体遮断薬のメチルスコポラミン、あるいは非選択的β受容体遮断薬のチモロールの前投与を行い、その後NSRPの側脳室投与を行う。(3)2017年にNURPとNMUのプロラクチンの相反的作用が判明したことから、NSRPとNMSの側脳室投与についても下垂体前葉ホルモン分泌への影響を調べる。さらに、NMU, NMS, NURPあるいはNSRPのバゾプレッシンやオキシトシン分泌に対する効果を比較検討する。これについても2018年度に一部を開始しているが、未だ十分な成果を得ていないため、2018年度から継続して完成させる。
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