研究課題/領域番号 |
16H05044
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30171143)
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研究分担者 |
藤原 大佑 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30611420)
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40453138)
赤澤 隆 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), 研究所・腫瘍免疫部門, 主任研究員 (80359299)
弓場 英司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80582296)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん免疫治療 / がん抗原特異的免疫増強剤 / 免疫抑制分子阻害剤 |
研究実績の概要 |
1)がん特異的免疫増強剤に関する研究: DC 特異的活性化剤であるh11cの大部分は疎水性であるので、h11cをpH感受性リポソームに組み込んだ場合、リポソーム中への埋没またはポリマーによるマスクにより、DCに反応できない恐れがある。そこで、本研究では、短鎖のpH感受性ポリマーであるCHexPG8を用いた。過剰なh11cによって生体に毒性の危険性を低くし、且つ充分なDCの活性が得るために、h11c/リポソーム脂質の比の調整を行った。CHexPG8リポソームに付加するh11cの割合を1~50%に設定し、DCの産生するIL-12量を指標にDCの活性を評価したところ、h11c濃度が5nMまで増加し、それ以降プラトーとなった。また、5~50%の割合において、5nM のh11cにおけるIL-12産生量は、遊離h11cと有意な差が見られなかった。この結果より、リポソーム脂質に対する最適なh11cの割合は5%とみなした。リポソームにCHexPG8を付加することで、DCによる抗原の取り込み効率は上昇し、CHexPG8あるいはh11cを付加することにより、DCのMHC class Ⅰ上のOVA提示効率は上昇した。 (2)免疫抑制分子に対する標的阻害剤に関する研究:既報の配列を基にプライマーを設計し、PCRによってイヌCTLA-4とイヌIgG heavy chainのcDNAを増幅した後に接合し、クローニングを行って、塩基配列を調べたところ、既報と100%一致していた。そのcDNAを発現プラスミドに組み込んでCHO細胞に導入したところ、イヌCTLA-4-Igの発現を認めが、プロテインAを用いた精製はうまく行かなかった。そこで、既存のヒトCTLA-4-Igのイヌとの交差を調べたところ、イヌの免疫反応もブロックすることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん特異的免疫増強剤に関する研究では、予定していた免疫増強剤構成要素の最適化および一部特性の解析を完了することができた。 免疫抑制分子に対する標的阻害剤に関する研究では、イヌCTLA-4-Ig遺伝子の作製およびそれによるタンパク質の発現には成功したが、精製はうまく行かなかった。しかし、ヒトCTLA-4-Igがイヌに交差することが判明したので、以後、ヒトCTLA-4-Igを用いて研究を進める目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)がん特異的免疫増 強剤の開発に関する研究: 1.免疫増強剤の特性解析:OVA 抗原(エピトープ)を発現する C57BL/6 マウス由来リンパ腫 細胞株である E.G7-OVA を用い、OVA 抗原をがん抗原と見立てて、 OVA 内包免疫増強剤で処置したDC によるがん抗原特異的 CTL の活性増強効果を検討する。 2.担癌マウスにおける腫瘍治療効果の検討:腫瘍抗原を内包した免疫増強剤によって活 性化された抗原提示 DC を用いて、同系マウスに移植した腫 瘍を治療し、腫瘍の増殖抑制効果を検討する。今年度は、担癌モデル として、 腫瘍株細胞の皮下接種によって体表に腫瘍を形成 させるモデルを用いて検討する。 (2)免疫抑制分子 標的 阻害剤の開発に関する研究: 免疫抑制分子(CTLA-4)標的阻害剤の作製:昨年度作製したイヌCTLA-4-Igあるいはイヌと交差反応が認められたヒトCTLA-4-Igを用いて、ファージディスプレイ法により、これらCTLA-4と結合性の高いペプチドを選択し、クローニングを行う。
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