研究課題
LPSによって脾臓において髄外造血が起こることが知られており、その発症には造血系細胞ではなく、造血微小環境(ニッチ)に発現するTLR4が関与することが明らかになっている。そこで、脾臓造血ニッチを構成する間葉系細胞に特異的に発現し、その過剰発現で髄外造血を誘導する転写因子Tlx1に着目し、LPSによって誘発される脾臓髄外造血の脾臓造血ニッチによる制御機構について解析を行った。まず、脾臓赤脾髄に局在するTlx1陽性細胞におけるTLR4の発現を解析した結果、他の脾臓間葉系細胞に比較し、高発現していることが判明した。そこで、LPSを投与することで髄外造血を誘発したところ、脾腫が認められ、Tlx1陽性細胞におけるTlx1遺伝子の発現亢進ならびにTlx1陽性細胞数の増加が観察された。また、免疫組織学的解析により、Tlx1の過剰発現で誘導される髄外造血と同様、濾胞周囲へのTlx1陽性細胞の集積ならびにその近傍への造血幹・前駆局在が認められ、LPS投与によってTLR4を発現するTlx1陽性細胞が造血幹・前駆細胞ニッチとして、髄外造血の場となっていることが明らかになった。さらに、LPS誘導性の脾臓髄外造血におけるTlx1欠損の影響についてTlx1CreER-Venus/floxマウスを用いて解析した結果、LPS投与による脾臓微小環境の変化、すなわち、Venus発現レベルの上昇(Tlx1遺伝子座の活性化)、Venus発現細胞の傍濾胞領域への集積ならびにVenus発現細胞におけるSCFおよびCXCL12などの造血ニッチ因子の発現上昇、それら全てがTlx1欠損によって消失し、脾臓における髄外造血も誘導されなかった。したがって、Tlx1の過剰発現により髄外造血が誘導されるという現在までの知見と総合すると、脾臓髄外造血は間葉系前駆細胞におけるTlx1の発現亢進によって制御されていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
グラム陰性細菌感染症による髄外造血モデルにおいて、脾臓微小環境を構成するTlx1発現間葉系細胞ならびにTlx1の発現が必要であることを解明することができた。
LPS投与による細菌感染誘導性髄外造血モデルに加え、細胞内DNAセンサーであるSTINGのリガンドであるc-di-GMP投与を用いた髄外造血モデルならびにフェニルヒドラジン(PHZ)投与による溶血性貧血モデルにおける脾臓間葉系細胞の役割を、Tlx1の発現レベルおよび発現細胞数の変化、造血制御因子の発現ならびに赤脾髄における局在変化という観点から解析する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件) 備考 (2件)
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