研究課題
骨髄性白血病は造血系の悪性腫瘍であり、その多くは骨髄の造血幹・前駆細胞における染色体転座に伴うHoxA9やMeis1などの正常な造血に関わる転写因子の過剰発現に起因することが知られている。一方、近年、骨髄の造血幹・前駆細胞の維持に関与する造血微小環境(ニッチ)の異常が、骨髄性白血病の発症に関与することが報告され、造血系細胞とニッチとの相互作用が骨髄性白血病の発症や悪性化に重要であることが明らかになってきている。しかしながら、骨髄性白血病において頻発する脾臓腫大(脾腫)の病態生理学的意義については明らかになっていない。そこで、脾臓造血ニッチを構成する間葉系細胞に発現し、その過剰発現で髄外造血を誘導する転写因子Tlx1に着目し、Tlx1を高発現した脾臓造血ニッチの骨髄性白血病の発症・悪性化における影響について解析を行った。まず、骨髄造血幹・前駆細胞にレトロウイルスベクターを用いてHoxA9とMeis1を発現させ、不死化した骨髄性白血病細胞(H9M1細胞: Kusabira OrangeおよびEGFPの蛍光で検出可能)を、タモキシフェン投与によりTlx1を脾臓造血ニッチに過剰発現したマウスならびにコントロールマウスに静脈内投与し、脾臓への生着について検討した結果、骨髄への生着には差がなかったが、脾臓への生着はTlx1高発現脾臓ニッチで有意に高かった。また、4週後の脾臓、骨髄におけるH9M1細胞の細胞数も脾臓ニッチにTlx1を高発現させると有意に増加した。さらに、脾臓ニッチにTlx1を高発現させた場合、早期に末梢血において白血病細胞が検出され、マウスの生存期間も有意に短縮した。以上の結果から、脾臓髄外造血ニッチの異常が骨髄性白血病の悪性化に寄与していることが明らかになった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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