研究課題/領域番号 |
16H05050
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
佐原 健 岩手大学, 農学部, 教授 (30241368)
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研究分担者 |
安河内 祐二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 主任研究員 (50355723)
伊藤 克彦 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80725812)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | BAC / 逆位 / 相互転座 / 染色体 / カイコ |
研究実績の概要 |
カイコの突然変異系統を用いた研究を進捗させた。黒蛾系統No937と黒蛾に類似する形質をもつu48系統で行った細胞遺伝学的な検討の結果、前者ではNo908とu41同様の部位に逆位が認められた。一方、u48系統は逆位が認められなかった。このことから、従来の推定通り、u48は黒蛾遺伝子とは異なる遺伝子座がこの突然変異の原因であると確定し、今後の研究からは排除することとした。u41系統を中心とした逆位の配列の絞り込みの結果、ブリッジするBACを特定でき、一方の近傍に存在する遺伝子がいくつか特定された。別種での論文報告から、この遺伝子が原因遺伝子候補の一つと推測された。この遺伝子のmRNA発現を翅原基の様々なステージにおいて行った結果、発現変動時期が程度特定できた。逆位配列の絞り込みも順調に進んでおり、もう一方の配列に関しても、Silkbase情報からBAC特定を行い、FISHによるブリッジを明らかにしつつある。 相互転座をもつカイコ系統において、ブリッジシグナルが認められるBACクローンを特定し、このクローンとcontigを形成するBACの配列決定を行った。その結果、Kaikobaseでは未知となっていた第6染色体の配列が特定でき、この部位を含めて、原因となっている配列候補が絞り込まれた。 ヨーロッパアワノメイガに関してZ染色体上のカイコ遺伝子オルソログを持つBACの選抜に着手した。EとZ系統の染色体組換え価が0となる領域を含む領域のBACも含まれている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、「NBRPカイコ」等を通じて入手したカイコ系統を用いた研究を進捗させた。 相互転座系統に関する研究では、既知のBACコンティグ情報をもとにFISH解析を行い、第6染色体相互転座部位をブリッジするBACクローンを特定した。また、予定通り特定されたBACならびにその近傍BACのゲノム配列を決定した。 黒蛾突然変異の原因と考えられる逆位については、確証がない2つの系統についてBAC-FISH解析を行い、No937には、u41やNo908と同様の逆位が存在することを確定させた。一方、黒蛾に類似するが黒蛾遺伝子座を持つと確定できていないu48系統では、逆位が認められず、黒蛾遺伝子座を持たないと考えられた。原因領域側と推測される部位にブリッジするBACクローンをFISH特定できた。この結果をもとにカイコゲノム情報を検索し、その領域自身もしくは近傍に存在する原因遺伝子候補を絞り込んだ。この原因遺伝子候補の発現解析を行い着色との関連を調査した。 以上の通り研究は概ね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
黒蛾の原因と考えられる候補遺伝子の発現変動時期が程度特定できたのでu41系統を中心に逆位領域の特定と候補遺伝子のノックダウン実験を予定している。黒蛾形質が消失もしくは軽減すれば、候補遺伝子が黒蛾の原因であると言える。 相互転座をもつカイコ突然変異形質の原因となっている第6染色体配列の候補が絞り込まれたので、この部位の欠失の有無をPCR検索する。欠失部位の配列決定を行い、突然変異の原因候補を得る。 ヨーロッパで採集され、利用しているフェロモンの相違がはっきりとしている2つの系統ヨーロッパアワノメイガ系統(EとZ系統)について染色体組換え価が0となる領域を含む領域のBACによるFISHマッピングを行う。また、チョウ目昆虫であるカイコZとヨーロッパアワノメイガZ染色体の対応関係を明確にする。
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